【警察の実力2016】(15) 絶大な警察権力の源泉…絶対的階級で29万人を統制

終戦直後、早期の治安維持を図る目的で、検察から捜査権と逮捕権を勝ち取った警察。それから70年余り、警察は絶大な権力を誇り続けている。その背景にあるものは、組織と情報だった。

「本部長のお帰りです」――。ここは、ある県の警察本部長室があるフロア。居合わせた総務部や警務部の職員たちは、その声が聞こえるや否や仕事を中断し、直立不動の姿勢を取って、姿が見えなくなるまで見送っていた。警察職員は全国に29万人。その内、都道府県警のトップである本部長には、警視監か警視長という階級でなければ就くことができず、その数は全国に僅か79人しかいない。つまり、超エリートな訳で、現場で働く警察官からすれば、まさしく“殿上人”。まるで、時代劇のように仰々しく見える様子も頷けよう。東京都を管轄する警視庁や道府県の警察本部、そしてその下に位置する警察署は其々、警視総監に本部長、そして署長を頂点とし、階級によって役職が決まるピラミッド型の組織体制が敷かれ、一糸乱れぬ統制を取っている。そうした組織に属する警察官は、組織の頂点に立つ者、そして階級が上の者の意思を、自らの意思として事に当たらなければならない。たとえ自らの主義や信条とは異なる命令であっても、粛々と従わなければならず、求められるのはただ只管に上からの指示を的確に熟すことに尽きる。何故なら警察は、一刻の猶予も許されない犯罪や災害といった事態に対処しなければならず、トップダウン型の組織でなければ対応できないからだ。現場で活躍する警察官たちは、各都道府県で採用された地方公務員だ。高校や大学を卒業後、警察学校へ入校すると同時に、最も下の階級である巡査に任命される。警察学校卒業後は交番勤務を皮切りに、警察署と本部(東京の場合は警視庁の為に本庁と呼ばれる)との間で異動を繰り返し、実務経験を積んでいく。尤も、警察組織のピラミッドを上っていくのは容易いことではない。警察には下は巡査、上は警視庁のトップである警視総監まで、9つの階級がある。長年、巡査として勤めたベテランに与えられる“階級的呼称”である巡査長も含めると、10階級になる。都道府県警の警察官は、巡査から現場の纏め役である巡査部長、責任者として現場を指揮する警部補、そして最前線の管理職となる警部まで、その階段を上るには昇任試験を突破しなければならない。昇任試験は、現場での実績や経験に関わらず、筆記試験の成績のみで合否が決まる公正無私なものだ。高い点数を取った者だけが昇任するという公平性こそ、警察官の階級に対する絶対的な信頼感を生む。たとえ警察学校の同期生であっても、成績順で序列が付けられるという徹底ぶりだ。若し上司受けが良かったり、過去に著名な事件の捜査に加わっていた等という人物本位の選考となれば、上司に阿ったり、地味な任務を拒んだりする者が出てきてしまい、組織の統制などとても取ることができない。つまり、階級制度に加え、客観的且つ中立的な昇任制度があるからこそ、警察組織の基盤は盤石で揺るぎない鉄壁の組織となっているのだ。

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こうした都道府県警を、国の立場でマネジメントしているのが『警察庁』である。警察庁は、戦前に存在した巨大官庁である旧内務省をルーツとする。旧内務省は、“官庁の中の官庁”と称された現在の財務省とも互角に渡り合った唯一の官庁だ。その系譜を継ぐ警察庁は、中央官庁が集まる霞が関で、財務省や経済産業省と並ぶ“伝統官庁”として通っている。そんな警察庁には、国家公務員総合職試験を優秀な成績で突破した者しか入れない。所謂“キャリア”と呼ばれる者たちで、例年20人弱しか採用されず、優秀と称される官僚の中でも屈指の俊秀たちだ。現場の警察官とは違い、警察官僚として警察行政を切り回す彼らは、入庁と同時に警部補の階級が与えられ、その後、昇進試験無しに警部・警視・警視正と自動的に昇進。警察庁と全国の警察現場とを交互に経験していく。彼らは、30代で都道府県警本部の課長や警察署長職に就く。現場の警察官では特に優秀な者が、定年間際にやっと就けるかどうかという役職だ。尤も、キャリアとして入庁した者は、地方採用の警察官のように、同期で仲良く定年退職の日を迎えることはない。早ければ40代から、「民間企業等に請われる形を取りつつ」(警察関係者)組織を去っていく者が出始める。そして40代後半ともなれば、同期の中で誰が最後まで残りそうか、おぼろげながら将来が見えてくるという。50代半ばになれば、都道府県警の本部長に就く。この頃には、何れも警察組織のトップである警察庁長官と警視総監に「誰がなるのかほぼ絞られる」(元警察キャリア)。ここからはポストに空きがあるか等、運と巡り合わせによるところが大きい。だが、警察庁の局長を経て、警察行政の中枢を担う官房長に就くことができれば、警察庁長官・警視総監の椅子が見えてくる。22歳で入庁し、トップに上り詰めるまで33~35年はかかる。扨て、嘗ての警察組織では、こうしたキャリアが担う“警察行政”と、地方の警察官が汗を流す“現場警察”との意識の差が大きく、統率に支障を来すこともあった。そこで導入されたのが、現在の国家公務員一般職試験合格者を採用する“準キャリア”制度だ。この準キャリアは、両者の橋渡し的な役割に加え、刑事や、少年犯罪といった各分野のエキスパートとしての活躍を期待されている。採用と同時に巡査部長となり、キャリア同様に採用年次に合わせて、自動的に昇進を重ねていく。警察庁にあっては、警察行政の実務を担う課長の補佐役である管理官が、「最終的な目標とする役職」(元兵庫県警警視)だという。つまり、警察という組織を体に例えるなら、キャリアが頭脳、準キャリアがそれを支える首となって、都道府県警という手足を動かしている構図だ。その頭脳は極めて優秀で、体も頭脳の指示を寸分違わぬ実行力で熟していく。優秀な頭脳と実行力、この両輪が揃っているからこそ、警察という組織は他の組織に類を見ない強さを誇っているのである。


キャプチャ  2016年7月30日号掲載

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