【もんじゅ・見果てぬ夢】(01) リスクが大きすぎる

“夢の原子炉”とされながら、20年余りで稼働は僅か8ヵ月。『もんじゅ』廃炉へ動き出した舞台裏を追った。

20161101 04
「もんじゅは今年中に、この会議で廃炉を含めて、抜本的見直しを行う」――。先月21日、首相官邸で開いた政府の『原子力関係閣僚会議』で、官房長官の菅義偉(67)が締め括った。文部科学大臣の松野博一(54)、経済産業大臣の世耕弘成(53)ら出席者から異論は出ず、“夢の原子炉”は終幕を迎えた。知恵の象徴の文殊菩薩に肖り、発電の度に燃料を増やす高速炉を実現させる。政府は、高速増殖炉原型炉『もんじゅ』(福井県)の開発に、これまで1兆円を超える国費を投じたが、20年以上殆ど動かず、行き詰まりは誰の目にも明らかだった。もんじゅは“パンドラの箱”だった。2011年の東京電力福島第1原発事故後に、旧民主党政権が廃炉に言及したものの、立地する福井県や敦賀市等が反発。『日米原子力協定』を結ぶアメリカからも懸念が広がり、撤回した。自民党政権になっても、扱いは有耶無耶だった。昨年11月、「もんじゅは核燃料サイクル政策の中核施設」と唱えてきた政府の足並みが乱れる。相次ぐトラブルに業を煮やした『原子力規制委員会』が、廃炉を含めた抜本的見直しを迫る勧告を出し、パンドラの箱が開いた。「今、廃炉の方針をはっきり決めなければ、企業の活動にも影響を及ぼしかねない」。経産省出身で首相秘書官の今井尚哉(58)らが動いた。もんじゅへの不信感は、原子力政策を揺るがす。福島原発事故後の規制で再稼働が認められたのは、僅か3原発7基。経産省は、もんじゅ問題が飛び火し、再稼働に待ったがかかるのを最も恐れた。首相の安倍晋三(62)への影響力が大きい今井ら、首相官邸を固める経産省からの出向者が主導し、政権は廃炉との判断に傾いていった。経産省は『日仏共同開発』を軸に、もんじゅに代わる高速炉の検討を進めた。

一方、もんじゅを所管する文科省は真っ向から対立した。国の最大の科学技術プロジェクトを存続すべく、事務次官の土屋定之(当時63)ら旧科技庁出身者を中心に手立てを探った。今年5月、同省の有識者会合は、再稼働を前提に、今後の運営体制に関する報告書を公表。文部科学相の馳浩(当時55)も、「研究開発は自ら主体的に取り組むべきだ」と声高に訴えた。文科省は、運営主体の『日本原子力研究開発機構』からもんじゅ部門を分離し、電力会社やメーカーの協力を取り付けて、再稼働にこぎつける青写真を描いていた。だが、打診を受けた電力会社やメーカーから、「民間企業にはリスクが大き過ぎる」と一蹴された。根回しした与党議員からも、「新たな運営主体にすれば信頼が得られるのか」と厳しい声を浴びせられた。馳が回答期限と決めた8月末を過ぎても妙案は無く、馳も内閣改造で文科相のポストを離れた。「血も涙も無い組織だ」。規制委への恨み節が空しく響いた。首相官邸は、水面下での調整に腐心していた。世論への影響を避けるべく、7月の参院選後から両省の協議は激しさを増したが、隔たりは一向に埋まらない。先月26日の臨時国会召集が目前に迫ってきた。「このままでは、関係閣僚の答弁がぶれる」。今度は官邸側の危機感が高まった。先月5日、菅が動いた。両省の考えを内閣官房を通じて聞き、「わかった。俺も考えてみる」。文科省は、「再稼働には6000億円近くかかる」とした試算を纏めていた。官邸内には、既に“廃炉止む無し”の空気が流れていたが、菅は「もう一度、課題を全部、詰めろ」と指示。自らの主張を繰り返す文科・経産両省に対し、菅は「自分たちに都合のいいことばかり言っている」と周囲に漏らした。1週間ほど経ち、文科次官の前川喜平(61)と、今井と同期入省である資源エネルギー庁長官の日下部聡(56)を官邸に呼んだ。廃炉を念頭に最終調整するよう指示し、方向性が固まった。それでも菅が気にかけたのは、長年、もんじゅに協力してきた地元の動向だ。これまでの議論は存廃の是非に集中し、廃炉になる際の地元対策が抜け落ちていた。「簡単な問題じゃない。地元に理解を得る努力が必要だ。急ぐ話じゃない」。菅は「もんじゅの方針を廃炉を含めて見直す」とし、最終的な廃炉決定を年末まで先送りする決意を固めた。先月18日からの訪米を控えた安倍に方針を伝えると、「それでいこう」と応じた。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2016年10月19日付掲載⦿
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