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【宇垣美里の漫画党宣言!】(03) “終わる終わる詐欺”の果てに

よもや、生きているうちに最終回を読める日が来るとは…。『銀魂』は、『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』のように永遠に続く物語になるものと思っていたけれど、三度の“終わる終わる詐欺”を乗り越え、遂に物語の幕が下りた。15年半前、中学生の頃に連載が始まって以降、私の本棚のかなりのスペースを占領している『銀魂』。長く絶妙なテンポのツッコミや、独特のセリフ回し、ボケにボケを重ねる手法、執拗なまでのギャグ被せ。私の笑いの好みや言葉の選び方は、明らかに『銀魂』から影響を受け過ぎて、少々小っ恥ずかしい。まさに、私の私らしさを作り上げていく上で欠かせなかった作品だ。舞台は、天人と呼ばれる宇宙人の闊歩するパラレルワールドの江戸。嘗て攘夷戦争で“白夜叉”と恐れられたものの、現在、ぐーたらで甘党でだめだめな侍・坂田銀時が、眼鏡なヘタレ・志村新八と、美少女なのに怪力で“ゲロ”インな神楽と共に、万事屋として様々な事件を乗り越えていく。言っている傍から情報量過多なのだが、何せキャラクターが多く、皆、クセが強い。幕末の志士たちがモチーフになっていて、土方歳三がマヨラー、沖田総司が腹黒ドSになっているのを目の当たりにした時は、正直、一旦本を閉じた。日本史のテストの時に錯乱して、銀魂のほうのキャラクター名を書きかけたこともあったっけ。

普段のくだらなさ全開のギャグも最高に面白い一方で、偶にくるシリアス回も心の琴線に触れるものばかり。「銀魂に泣かされるなんて…」と毎回、謎に悔しがってしまう。普段は過剰な下ネタやギリギリアウトなパロディーばかりなくせに…! 最終章はまさにシリアス回の真骨頂。銀時の嘗ての師が宇宙全体を巻き込んで、地球そのものを滅亡せんと破壊の限りを尽くす中で、主要キャラクターがぼろぼろ死に、何度も苦境に立たされる万事屋の姿に目を逸らしたくすらなった。大切なもの、どちらかを選ばなければどちらも失ってしまうような場面が幾度となく彼らを襲ったけれど、そんな状況でも全てを諦めず、汚かろうが情けなかろうが、敵も味方も清濁併せ呑んで、強欲に救いたいと戦うその姿こそが、銀魂の魂なのだ。ずっこけて泥だらけになりながらも、全て背負って自分らしく突き進まんとする彼らの背中に、私は何度も助けられた。どちらか、じゃない、どっちもだと駄々をこねてあがく彼らの姿勢に勇気を貰ってきた。そんな彼らに呼応して我々もと立ち上がる民衆の姿に希望を感じた。最終回の更新が遅れに遅れ、あわやこの連載の締め切りに間に合わないのではと肝を冷やしたが、まさに集大成、本当に最高だった。15年半という年月の中で、万事屋と共に江戸という町、そして読者である私も皆、成長したのだなぁとしみじみとして、ちょっと泣いた。誰も取り残さない皆が救われる最終回は爽快感すらあって、彼らが去ってしまったとは思えない。またどこかでひょっこり会えるような気がしてならないのだ。きっとそう遠くないうちに。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。近著に『風をたべる』(集英社)。


キャプチャ  2019年7月11日号掲載
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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:George Clooney

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