【男の子育て日記】(25) ○月×日

既に本連載をお読みの方はご承知の通り、妻の三輪記子はおかしい。これまで付き合ってきた女性はエキセントリックな気質の人が多かったけど、妻は最高峰に位置する。あれは妊娠中の時のこと。一体、何が気に障ったか思い出せないが、「飛び降りてやるよ! 私には造作もないことなんだ。見てろよな!」と玄関を出ていこうとした時は、必死で止めましたよ。翌日は筋肉痛でした。出産後の今は更に酷い。号泣しながら「離婚する」「手首を切り落とす」「親権あげるよ」等、正気ではなさ過ぎる。情緒不安定にも程があるだろ。先日も大荒れに荒れた。「子供ができたら、親はこれまでのように自分のやりたいことなんてできないよ。パートナーの協力と理解もあって7割できたら御の字でしょ? 俺だって、あの子が生まれてから1本も小説を書けていないよ?」。そう宥めたが馬耳東風。スマホ見ていると思ったらツイッターをしていた。後日、泣いて謝罪してくる。これもパターン。「毅ちゃんごめんね。でも、出産後の女性の感情の起伏はエベレストの高低差に匹敵するんだって」。えっ、じゃあ元からそうだった貴女はどうなるの? 連載当初に想定していた“ほんわか育児モノ”とは程遠くなってしまった。まるで『死の棘』だ。『狂人日記』だよ。“三輪記子暴走日記”。「でも意外だよね、風俗もAVもやったことないんでしょ?」(※夫として、この問いはどうかと思う)「一杯仕送り貰っていたから。親は、『カネを与えなくなったら、私が何をしでかすかわからない』と思っていたからね」。

舌を出す。誇らしげだ。ここまで頭がおかしな人だったとはなぁ。なのに、妻はテレビでは、その面白さが全くと言っていいほど発揮されていない。やっと僕に唆されて、『ネプリーグ』(フジテレビ系)で「東京大学以外は専門学校」と名言を吐いてくれた。でも、想像していたほどの反響は無い。ネット炎上してよー。「もっとやりなよ。“白熱ライブ ビビット”(TBSテレビ系)とか、生放送で挨拶から『おまんこんにちは』って。そうしたら、岩井志麻子さんとレギュラー決まるよ、TOKYO MXで。あと、関西でバカ丸出しのネトウヨ番組があるじゃん。あれに出てさ、『そんなに戦争がやりたいなら、お前とお前の息子が最前線に行くとテレビカメラの前で約束しろ!』とか、『御大層なことを言う前に、赤ん坊のオムツを取り替えたことがあるのか? 保育園の送り迎えをしたこともない輩が、エラそうに天下国家を語るな!』とか、『短小包茎のヤツこそ言うことがデカイよな、私の経験上』ってカマしてきなよ」。もう、ローターで遠隔操作して言わせようかな。そういえば、こないだ小沢健二のライブに行ったんですよ。その間、一文を預かってくれたお家に引き取りに行った時のこと。小中学生の幼気な男の子と女の子が5~6人、其々の親もいる前で、何の脈絡も無くいきなり、「お父さんみたいに大きいおちんちんになりますように!」ってあれ、今年一番のドン引きシーンだった。何考えてんだコイツ。いや、基本いい人だと思いますよ。僕と結婚するくらいの変人だけど。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2016年11月3日号掲載
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