【もんじゅ・見果てぬ夢】(03) 廃炉のたびに人が消える

20161104 04
先月21日22時。福井県庁を訪れた文部科学大臣の松野博一(54)に、福井県知事を務める西川一誠(71・右画像左端)が憤りをぶつけた。「無責任極まりない対応で、裏切りと思われても仕方がない。大変遺憾だ」。原因は同日夕、政府が開いた『原子力関係閣僚会議』。高速増殖炉原型炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)について、「廃炉を含めて抜本的に見直す」と決定した。何の説明も無く、事後報告で済ます姿勢が“地元軽視”と映り、普段は温厚な西川に強い態度を取らせた。強い不信感を持った西川は、2日後の23日に経済産業大臣の世耕弘成(53・右画像右)、27日に官房長官の菅義偉(67)と面談し、政府の対応を批判した上で、“地元の発展に繋がる結論”を求めた。約1週間後の29日、西川の言行を見守ってきた前敦賀市長の河瀬一治(65)は個人事務所で、「次の高速炉か研究開発の拠点が敦賀市か県内に決定すれば、振り上げた拳も下ろせる」と複雑な知事の心中を代弁した。市長を務めた20年間に、新型転換炉『ふげん』と日本原子力発電敦賀1号機の廃炉が決まり、その影響の大きさは身に染みている。

地元の感情は複雑だ。約1000人の市民が原子力関連で働き、飲食店等への波及効果は、人口約6万7000人の市に実力以上の経済効果を齎した。一方、1995年のナトリウム漏れ事故を始め、トラブルや風評被害の苦しみは計り知れない。敦賀市白木地区に住む橋本昭三(88)は、政府が廃炉に傾いたことを知った今でも、「日本の将来に役立つ研究施設が故郷にあることが誇りだ」と話す。市議会議長を務めた橋本は67年間、1日も欠かさず地区の歴史を記録してきた。和紙の冊子を広げると、政府が非公式に現地を視察した40年前のやり取り、1985年の着工を巡る住民の反対、ナトリウム漏れ事故で地元の魚価が暴落したこと…。4万5000枚の和紙1枚1枚が雄弁に語りかける。もんじゅは飽く迄も国家プロジェクトだが、既に敦賀市と原発は切っても切れぬ関係にある。2003年に新型転換炉『ふげん』の運転が終了した後、大手重工メーカーの従業員寮が消えて、国内全ての原発が停止した2012年には、多くの飲食店が経営危機に追い込まれた。地元のタクシー運転手は、「原発が止まる度に人の流れが減っていく。もんじゅまで廃炉になったらどうなるのか」と零した。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2016年10月21日付掲載⦿
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