【JR九州・意地の上場】(01) “夢のまた夢”苦難越え

発足から30年目で『JR九州』が上場した。悲願達成の舞台裏と、国鉄改革の今を追う。

20161104 05
「一緒に鐘を打とう」――。先月25日、『東京証券取引所』で開かれた『九州旅客鉄道(JR九州)』の上場セレモニー。6月まで副社長だった渡辺晴一朗(63)は、専務の本郷譲(60)と前田勇人(57)に声をかけた。鐘の回数は5回。社長の青柳俊彦(63)、会長の唐池恒二(63)、第2代社長の田中浩二(78)、第3代社長で現相談役の石原進(71)と4人が1回ずつ鳴らすことが決まっていた。最後を誰が打つか。「上場は夢のまた夢」(石原)という苦難の時代を共にした本郷と前田を、渡辺は誘わずにはいられなかった。「最後の1回は3人で」と紹介され、7人での打鐘となった。旧国鉄の分割民営化に伴う1987年の発足から30年目の悲願の節目に立ち会う為、式典には旧国鉄組の役員がほぼ揃った。釣り堀やキノコ栽培。“ダボハゼ経営”と揶揄されながら多角化を進め、鉄道事業の赤字を乗り越えてきた。上場の審査入りまでこぎ着けた直後の4月14日、熊本地震で九州新幹線の回送列車が脱線した。16日に現場を訪れた青柳は、言葉を失う。新幹線の全車両が脱線したのは、JR史上初めてだ。「復旧に協力してほしい」。青柳は、旧国鉄の同期である『東海旅客鉄道(JR東海)』社長の柘植康英(63)に直接電話した。快諾を得た青柳は、車両をジャッキで持ち上げ、レールに載せるという異例の作業を決断した。余震が続く中での作業に、「上場は困難」との考えも過る。それでも、23日には博多-熊本間で運転を再開した。熊本にいた青柳は、復旧初便に乗り込んだ唐池とJR熊本駅で偶然会い、固く握手し、肩を叩き合った。「漸く、ここまで来たな」。5月、財務部長の東幸次(49)は悩んでいた。地震影響額の算定に時間がかかる。「来年3月期業績予想を未定にする」と唐池に報告すると、逆に「2週間で作れ」と迫られた。発表を遅らせてまで開示に拘った。

今年3月期には、鉄道関係の資産について5200億円超を減損処理した。減価償却費を抑え、上場後に鉄道事業を黒字転換できる。ただ、今年3月期が大幅赤字になった上、来年3月期の予想も無いのでは、投資家が離れる。唐池は、「良い業績見通しを示せば、投資家は期待を抱く筈」と踏んだ。過去の災害等を参考に、急ピッチで被害額を纏めた。東は5月20日、決算発表の場で「鉄道事業は今後も黒字を維持する」と言い切った。今、稼ぎ頭の不動産も順風満帆とは言えなかった。8月、常務の田中龍治(62)は、炎天下の京都を歩いていた。有望なホテル用地を書き込んだ地図には×印が並んでいる。既に5回の入札に失敗した。「上場前に下手な物件に手を出すな」と厳命されてきた結果、激戦区に挑み敗れてきた。田中は唇を噛み、「上場すれば思い切った投資ができる」と言い聞かせた。迎えた先月25日の上場日。売買代金は東証1部で最大、2位の任天堂の3.5倍に膨らんだ。終値換算の時価総額は4780億円で、今年の新規上場では『LINE』に次ぐ。ただ、投資家の評価は良いものばかりではない。「寄り付きで全株売りました」。札幌市在住の個人投資家であるハンドルネーム“もっち”(36)は、証券会社の抽選に当たって株式を購入した。しかし、「業績成長性に乏しく、長期保有できない」と判断して、早速売却した。「日本郵政とイメージをダブらせた投資家も多いようだ」。『楽天証券』チーフストラテジストの窪田真之(55)は、個人の売りも多く出た理由を分析する。同じ民営化銘柄の『日本郵政』は、日銀の低金利政策で成長シナリオを描くのに苦戦。グループ3社の株価は、公募価格を割り込んで推移する。機関投資家にも懐疑派はいる。売上高が1兆~3兆円の本州3社に対し、九州は3779億円。鉄道事業は、人口減で大幅な利益増が見込めない。不動産事業に期待する声は多いが、『アリアンツグローバルインベスターズジャパン』取締役の寺尾和之(51)は「それなら不動産株に投資したほうがいい」と手厳しい。「収益力を強化できるか見極める」。日本株運用のアメリカ系機関投資家で、『T.ロウプライス』のポートフォリオマネージャーであるアーシバルド・シガネール(40)は見守る立場だが、猶予は3~5年だ。上場の次にどんな夢を描くのか。市場は30年も待ってはくれない。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2016年11月1日付掲載⦿
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