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【村西とおるの「全裸で出直せ!」】(13) 人間の役割の第一は何よりも自分の命を生ききること

アメリカの裁判では、本裁判が始まる前に予審があります。検察と弁護人双方が、これから行なわれる裁判について、お互いの主張を予めぶつけ合い、持っているカードを見せ合います。それにより、裁判長は裁判の大凡のスケジュールを決めて、本裁判に臨みます。幾つかある容疑の中に“ビザの詐取”というものがありました。撮影目的での入国でありながら、偽って観光ビザで入国したということが“ビザの詐取”にあたるというのが、検察側の言い分でした。“ビザの詐取”は連邦法違反の重罪です。よって裁判はハワイ州の法律で裁かれるのではなく、アメリカ連邦裁判所で審理されることになりました。メキシコから数百万人の密入国者がアメリカに侵入し、労働ビザ無しで働いていますが、逮捕されても裁判にかけられることなく、国外追放されるだけです。不法侵入のパスポート所持の犯罪者より、正規のパスポートを持ってアメリカに渡り、資格外活動を行なった人間のほうが何十倍も罪が重いということなのでした。資格外活動といっても、雇用者はアメリカ人ではなく、自分の日本の会社でした。アメリカの雇用や労働者に何の危害を与えたわけでもなく、“ビザの詐取”に問われることに釈然としませんでした。

加えて検察側は、幾つかの罪で裁くことを予審の段階で裁判所に申し立ててきました。その中の一つに“マン・アクト法違反”というものがありました。当時から約80年前の1900年代初頭に、アメリカで無敵を誇った黒人のボクサーがいました。このチャンピオンは勝利をすると、愛人の白人の娼婦をリングに上げ、これ見よがしに熱く抱擁をしてみせたのです。人種差別の厳しい時代でした。晩飯も喉を通らぬほどの屈辱に燃えた白人社会が、この蛮行を阻止せんと作った法律が『マン・アクト法』でした。この法律は、「州や国境を越えて、猥褻な目的で、何人もアメリカ国内で活動をしてはならない」というものです。この古色蒼然たる埃の被った法律を、約80年ぶりに検察当局は裁判に持ち出してきたのでした。予審の段階で手前どもにかけられた容疑は66ありました。15名のスタッフにはビザの詐取、共謀罪、証拠隠滅、マン・アクト法違反の容疑が4つかけられましたが、手前どもはスタッフ15名の主犯として60の容疑をかけられ、それに自分の罪4つと、不明な理由の2つの罪が加わり、66の罪で起訴されたのです。日本には包括一罪という法解釈がありますが、アメリカでは違いました。一つひとつの罪に判決を下すというやり方です。弁護士によれば、検察の主張通りに判決が下れば、手前どもは370年の刑に服さなければならないというのです。話を聞いて脱糞しました。


村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。


キャプチャ  2019年8月1日号掲載
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