【JR九州・意地の上場】(02) 居るうちが勝負

20161108 10
先月25日、『東京証券取引所』の上場セレモニーを終えた『九州旅客鉄道(JR九州)』会長の唐池恒二(63)の携帯電話が鳴った。「おめでとう」。相手は、元国土交通省事務次官で、現在は『損害保険ジャパン日本興亜』顧問を務める本田勝(63)。上場の恩人の本田に対して、唐池は電話を手に、つい頭を下げた。旧国鉄で分割民営化の動きが本格化した1985年。本田は国鉄再建に向けた対策準備室にいた。JR九州に3877億円の経営安定基金を与えて、その運用益で赤字の鉄道事業を補う絵を描き、1987年の民営化も見届けた。だが、「九州・四国・北海道、三島会社の完全民営化なくして、国鉄改革は成功と言えない」。執念を抱き続けていた。それから27年後の2014年7月、本田は事務次官に就くと直ぐに動き出した。社長を退いたばかりの唐池が挨拶に行くと、本田は「上場をやるぞ」と嗾けた。「本田さんは本気だ」。唐池は、本田の気迫を感じ取った。

今や、国交省で国鉄改革を経験した人は数少ない。「本田さんが在任する1年間が勝負」。まさにラストチャンスだった。「どんな会社になりたいのか?」。本田の問いに、唐池は「普通の会社になりたい」と訴えたが、高い壁が現れる。財務省が財源確保の為に、基金の返還を国交省に求めた。唐池は、「返すぐらいなら上場を止める」。財務省と交渉するのは国交省。直接言えない代わりに、公の場でも主張し始めた。巨額の基金が取り上げられると経営が厳しい。相談役の石原進(71)も、赤字路線を押し付けられた代わりに受け取った「手切れ金だ」と返す気は無かった。本田も意を汲み取っていた。先月、国交省が設けたプロジェクトチーム(PT)名に“完全民営化”と謳い、退路を断った。「観光列車の路線図が欲しい」。PTは、JR九州の上場担当である酒井覚(40)に資料を矢継ぎ早に求め、経営実態を把握。「基金が地域活性化に不可欠だ」と理論武装し、財務省を押し切った。昨年5月、同社に対する国の経営関与を外す為に必要となる『JR会社法』改正に向けた国会審議。国交省は、改正に反対する議員を抑えるよう指示した。参考人招致された社長の青柳俊彦(63)は、夜を徹して国交省と打ち合わせた答弁を練習した。同年6月に『改正JR会社法』が国会を通過してから約2ヵ月後、本田は次官を退いた。上場へのレールは既に敷かれた。本田の熱意で、唐池の最後の賭けが実った。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2016年11月2日付掲載⦿
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