【働く力再興】第1部・安住の根を絶つ(01) ドイツ・フランス・韓国の改革…優しさだけでは負ける

今秋、政府の“働き方改革”が始動する。人口減が進む中、有能な人材を成長分野に集め、人も企業も生産性を高めないと国力は衰えてしまう。雇用を流動化し、残された非効率な慣行を刷新できるのか。改革に臨む政・官・民の本気度を問う。

20161109 11
今年、フランスと韓国は労働関連法案の扱いを巡り、世論が割れた。フランス政府は今春、企業の業績が悪化した場合に従業員を解雇し易くしたり、労使で合意すれば週35時間労働制を46時間に延ばせたりする法案を纏めた。頻発するデモで“経営者寄り”との非難が渦巻く中、政府は先月、反対派の主張も取り入れ、成立にこぎ着けた。韓国の朴槿恵(64)政権も、解雇要件の緩和に手を付けた。「一定のルールの下で人の移動を活発にすれば、新規採用の余力が増し、高止まりする若者の失業率が下がる」と踏んだ。ところが、4月の総選挙で与党は敗北。改革論議は再起動の目途が立たない。両国の狙いは同じだ。雇用を流動化し、企業の活力を引き出す。企業の自由度を高め、成長分野に導く改革に労働者は不安を抱きがちだが、強い企業が増えれば雇用も増える。そうなると、労働者のやる気も所得水準も高まり、経済の長期停滞を回避し易くなる。労働力が右肩上がりで増えた時代は過ぎ、成長の伸びしろが無くなりつつある。先進国共通の構図だ。

人数が増えないなら、1人当たりの労働生産性を高めるしかない。企業を強くし、技術革新を大胆に取り込む策を練る。職業訓練等で労働者を支えることも忘れてはならない。とはいえ、シリコンバレー等で成長産業を生み続けるアメリカですら、足元で労働生産性はマイナス基調にある。一橋大学の深尾京司教授(60)は、「世界中が労働生産性を上げる解を見つけようとしている」と話す。主要7ヵ国(G7)で生産性が最低の日本は、急いで解を探り当てねばならない。政府は来月以降、有識者と具体策を練り始める。長時間労働の是正・同じ仕事に同じ賃金を払う“同一労働同一賃金”の実現・高齢者の就労促進…。メニューは揃うが、格差解消や労働時間の削減等に重きが置かれているようにみえる。弱者に配慮した優しい分配政策に焦点を当てるだけで、人口減のハンディキャップを跳ね返せるか。ドイツは2000年代前半から、国の給付による手厚い保護を改め、労働者の就労意欲を高める改革を進めてきた。格差拡大等の課題も残すが、見込み通り、自立した働き手を増やした。試行錯誤しながら成長の源泉を刺激するドイツは、世界の先を行く。日本は周回遅れにならないよう、改革に挑む必要がある。必要なのは、国・企業・個人が揃って働き方を見直すことだ。企業は働き手の能力を引き出す場と柔軟な働き方を提供しつつ、厳しく成果を求める。労働者も、自ら活躍の場を広げる。国は企業や労働者が働き易いルールを整え、成長分野への移動を促す。目の前の軋轢を避ける優しさでは、国の力も民の力も強まらない。


⦿日本経済新聞 2016年8月30日付掲載⦿
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