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【WATCHERS・専門家の経済講座】(43) 地方の足、地域で守る――石田東生氏(筑波大学名誉教授)

20190830 07
「人々が安全で快適、そして幸せに暮らす為、日々の移動手段の確保はとても大切です。今、こうしたモビリティーの在り方をゼロから考え直すべき段階を迎えています」。全国各地で高齢者による交通事故が相次ぐ。一方で、地方を中心に「自動車がないと生活できない」といった声は根強い。「高齢者に免許返納を促す動きが強まっています。ただ、高齢者の運転だけを問題視するのは安易な議論ではないでしょうか。交通事故は、ドライバー自身の問題以外にも、車の性能や街作りの在り方、人々の暮らし方等、様々な要因が複合的に重なって起きています。特に高齢者の運転を巡っては、社会全体で安全を確保する仕組みやシステムを考えてこなければいけなかった。しかし、その努力が不足していたと言わざるを得ません。この皺寄せが、各地での事故に繋がっているのです。事故を防ぐ道路の在り方について、よく考える必要があります。国内の道路の内、歩道が整備されている場所は、実はごく僅か。歩道の整備にはお金がかかる上、住宅地が狭まる等、街作り全体の問題でもあるからです。地方では、車を持たない高齢者は、持っている人に比べて外出する頻度が大きく減る傾向があります。車がない高齢者の外出先は、病院や買い物等に止まります。友人との交流やボランティア、サークル等、自分の好きな活動をする為に出かけることで、人はより幸せな気持ちになれる筈です」。

「交通と都市計画、人々の暮らし方等を同時に議論する“交通街作り”という考え方があります。どういった街を目指し、誰が費用を負担していくのか。地域を挙げて考えることが重要なのです。地方でのモビリティーの確保を考える時、バスや鉄道といった公共交通の維持は避けて通れない問題です。公共交通機関は一般の車に比べて安全な上、移動の速さや定時運行等でも大きな魅力や価値を持っているからです」。地方では人口減少に伴い、鉄道やバスの路線が廃止されるケースが出ている。バスは運転手の人手不足も追い打ちをかける。「国は、これまで交通機関に対して様々な補助制度を設けてきましたが、基本は独立採算です。交通機関が他の事業者と連携するのは難しかったのが実情です。こうした実態を踏まえ、近年、MaaS(※モビリティー・アズ・ア・サービス)という取り組みが出てきました。タクシー、バス、鉄道等を一体的なサービスにして使い易くする試みです。乗客は利便性が高まり、交通事業者は効率化を図れます。勿論、マースを導入すれば、これまで赤字だった地方公共交通が直ぐに黒字転換できるわけではありません。それでも、より良いサービスで乗客が増え、事業者の赤字負担が減る可能性は高まるのです。公共交通を維持するには、国の役割が非常に大事です。MaaSの実現には、運行ダイヤや運賃等のデータを交通事業者間で連携させることが重要です。だが、中小の交通事業者にはシステム開発費の負担が重い。国が基本的なシステムを提供し、地域毎に適応させる仕組み等も検討すべきでしょう。思い切った規制緩和も必要です。地方等では、バスや列車に貨物を載せる“貨客混載”が広がっています。逆に、貨物自動車に客を乗せる取り組み等も考えてはどうかと思います。大手宅配会社や郵便等の配送事業者にとり、人口密度が少ない地域でビジネスを成り立たせるのは容易ではありません。貨物と乗客を柔軟に運ぶ取り組みは、収入の底上げに繋がる筈です。但し、実現には、貨物事業者への規制や、旅客を乗せるのに必要な運転免許の種類といった法令面が大きな壁になる。現在は過疎地等を除いて原則禁止されている自家用自動車による有償運送についても、安全性を検証しつつ、緩和を考える必要があるでしょう。自動車メーカーの役割にも期待がかかります。日本の車メーカーには、優れたモビリティーサービスを提供できる資本力、技術力、影響力があります。今後、地方で自動運転の導入が進むのは、予めルートが決まっており、地域住民の合意も得易い公共交通が中心になるでしょう。各メーカーには、地方の公共交通の分野でも自動運転の実現に向けた取り組みを加速してもらいたい。最後に、地方に暮らす住民の役割です。互いに送り迎えをする等、住民自らがモビリティーの確保を担うこともある。街作りや地域での暮らし方、車の使い方等についても、行政任せではなく、住民側から積極的に提案する姿勢が欠かせません」。 (聞き手/経済部 山村英隆)


キャプチャ  2019年8月28日付掲載
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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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