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【地方銀行のリアル】(29) 北洋銀行(北海道)――拓銀亡き後の北海道を背負う辛苦



20190830 11
資金を寝かせておくよりは自治体に貸したほうがマシとでもいったところか。メガバンクや地銀大手の間で低採算の地方自治体向け融資を圧縮する動きが目立つ中、逆にそれを大きく膨らませている金融機関がある。札幌市に本店を置く北海道内最大の銀行で、第二地銀首位の『北洋銀行』だ。2019年3月期末の自治体向け融資残高は2兆627億円。前期末から7.2%伸びて初めて2兆円の大台を超え、貸出金残高全体(※6兆5772億円)に占める比率は5年連続増加して31%超に達した。全国平均は約7%とされているから、実にその4倍以上ということになる。自治体向け融資は限りなくリスクフリーに近い代わりに、貸出金利回りも「悲しいほどに低い」(首都圏地銀幹部)。2兆円超の融資残高の「半分以上を占める」(関係者)とされる北洋銀行の北海道庁向け貸出金利回りは、凡そ0.3%。全店ベースの利回り0.94%と比較すると、3分の1にも満たない水準だ。だが、それでも敢えて自治体が実施する入札に参加し、融資に縋りつかざるを得ないところに、北洋銀行の置かれた収益環境の厳しさがある。コア業務純益は2014年3月期をピークに4期連続ダウン。30億円近い経費削減が奏功し、2019年3月期こそ152億円と前期比2.6%の微増益に踏み止まったものの、2020年3月期は133億円と再び減益に沈む。今年5月には、2017年春からスタートさせた中期経営計画も大幅に下方修正。これまで2020年3月期で230億円としてきた経常利益目標は150億円に、160億円だった純利益目標は105億円に引き下げた。

「道経済は観光業、インバウンド消費、公共事業に支えられて、全体的には足元緩やかに持ち直しているとされているが、鉱工業生産は弱含んだままだ。それに、道内は構造的に製造業の底が浅く、民間企業の資金需要は一向に盛り上がってこない」。北洋銀行関係者は溜め息を漏らす。足元ばかりではない。先行きに対する閉塞感と危機感の強さは殊の外だ。背景にあるのは、1997年をピークに全国平均より10年早く始まったとされる人口減少だ。国の推計によると、2040年の道内人口は419万人と、2010年対比で約24%縮小。全国平均の減少率約16%を大きく上回る。しかも、札幌圏を除いた地域の減少率は32%超。全道179自治体の半数以上で人口が5000人未満になるとされている。「これでは、金融機関の営業店のオペレーションなど到底成り立つ筈もない」。前出の北洋銀行関係者はこう呻いて天を仰ぐ。北洋銀行は今年に入って利用客数が落ち込んでいる支店を閉鎖し、近隣の支店内に移転させるといった形での店舗再編を本格化させている。3月には千歳富丘支店を千歳中央支店に集約。7月には旭川北支店を春光支店に一体化させた。年度内に更に3~4店の集約化を進めたい考えだ。とはいえ、広い北海道。都市部ではある程度集約できても、支店と支店の距離が隔絶している道北や道東等の地方圏では、こうした手法にも自ずと限界がある。今後、人口減少のスピードが益々加速していく中、顧客の利便性と個々の店舗の採算性にどう折り合いをつけてネットワークを再構築していくのか。最適解は「未だ見出せていない」(幹部)。自治体向け融資が膨らんでいる裏には、自治体側の懐事情もある。道内経済の地盤沈下等で財政状態が苦しく、「資金繰りを市中銀行からの借り入れに依存せざるを得ない」(帯広市役所関係者)というわけだ。一般会計での借入金残高が2018年度末で1兆8184億円と最大の借り手でもある道庁の同年度の財政規模は2兆7498億円(※当初予算ベース)。ピークだった1999年度から7000億円近く圧縮し、2017年度より0.1%減ったとはいえ、大阪府を上回り、東京都に次ぐ。面積が広いだけでなく、雪国でもある北海道では、公共工事の発注費や人件費を始めとした固定費が嵩む。この為、緊縮に緊縮を重ねても予算規模がどうしても膨張してしまうのだ。2019年度は、高橋はるみ前知事(※現在は参議院議員)時代に纏めた骨格予算に、鈴木直道新知事の下で編成された補正予算を合わせて2兆8609億円。新知事が掲げる“攻めの道政”を反映させる形で3年ぶりに増加に転じ、歳入(※一般財源ベース)から歳出を差し引いた財政収支のマイナス幅は440億円と、前年度より30億円増大する。不足分は、道の貯金にあたる財政調整基金の取り崩し等で補うしかない。しかも歳入の内、7156億円は地方債(※道債)だ。歳入全体に占める割合は25%(※前年度24%)に高まり、2019年度末の残高は過去最高の5兆8900億円に膨らむ。全国の都道府県で断トツだ。その上、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率は20.9%と、全国最悪の水準になる見通し。地方自治体財政健全化法で一般単独事業の許可が制限される早期健全化基準25%超えも視野に入る。「ここまで財政が厳しいと、たとえ利益を生まなくても、地域経済を下支えする為に必要なコストと割り切って、自治体にミルク補給(=融資)を続けていくしかない」。北洋銀行幹部の一人は言い切る。

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北洋銀行は、小樽市に本店のあった『北海道無尽』が母体。その後、5無尽による統合等を経て、1945年に札幌に本店を移し、相互銀行から普通銀行へと転換した。画期となったのは何と言っても、1997年11月の『北海道拓殖銀行』の経営破綻だろう。破綻前の拓銀に対し、総資産で約5分の1、行員数で3分の1の存在だったにも拘わらず、その道内向け貸出債権の受け皿として名乗りを上げたのだ。部分的とはいえ、第二地銀が都市銀行を呑み込むという「前代未聞の淘汰劇」(金融筋)とも言われた。実際に営業譲渡が行なわれたのは1年後の1998年11月。引き継がれたのは、拓銀の道内貸出債権3兆4800億円(※貸出先16万2600件)の内、要注意先等一部不良債権を含む1兆8600億円(※同15万8400件)で、破綻懸念先等の残る不良債権は『整理回収銀行』(※現在の『整理回収機構』)が買い取り、道外債権は『中央信託銀行』(※現在の『三井住友信託銀行』)に譲渡された。当時の拓銀の道内店舗数は129店、道内行員数は3357人で、この内、北洋銀行が継承したのは109店舗、1903人。札幌市内の7店舗を始め、20店舗は閉鎖され、結果的に1400人以上が失職へと追い込まれたことになる。その後、北洋銀行は2001年、『札幌銀行』と共同持ち株会社『札幌北洋ホールディングス』を設立して経営統合。2008年10月には持ち株会社の下で札幌銀行を吸収合併する等、業容を更に拡大させる。2019年3月末の総資産は9兆7597億円。遂に1997年3月末時点における拓銀の水準を上回った。とはいえ、拓銀破綻で一段深まったとされる道経済の不振を超克する道筋は、今なお開けないままだ。


キャプチャ  2019年8月号掲載
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