【Test drive impression】(01) 『アバルト124スパイダー』――コイツが噂の日本製イタリアンスポーツカー!

ビックリした! つくづくスゴい時代だわ。先月発売となった『アバルト124スパイダー』は、一見、クラシカル且つ本格的なイタリアンブランドの2シーターオープンに見えますけど、中身はまさに現代の奇跡そのもの! 譬えるなら、イタリアで認められた中田英寿や中村俊輔のスーパーゴールと言うべきか、本場・ローマの食堂で正式採用が決まった『オーマイパスタ』か。要するに、アバルト124スパイダーは奇跡の日伊コラボ作なのです! 見た目&エンジンはリアルイタリアン。丸目でイカつい鬼瓦マスクは、今時シブ~い男気伝統デザインだし、スポーツカーの魂とも言うべき1.4リッターターボエンジンもイタリア製。どっこい、それ以外のほぼ全て、ボディー骨格やら足回りやらギアボックスやらは、去年誕生した『4代目マツダロードスター』(249万4800円~)譲りで、事実上の兄弟車! 実は、生産もロードスターと同じ広島の『マツダ』工場で世界初。“広島産本格イタリアンスポーツ”。仮にですよ、『フェラーリ』が日本で、『ポルシェ』が広島で造られたら、相当にヘンな感じでしょ? だけど、それが実際に行われていると。何故に、こんな奇跡のコラボが実現したのか。その理由は大きく分けると2つありまして、1つは時代の変化です。どういうことかというと、1960年代に話は遡ります。当時のライトウェイトオープンは、イギリスとイタリアが2強と呼ばれていました。当時の大衆車は、走りのいいリア駆動のFR車ばかり。だから、それをちょっとイジっただけで気持ちいいオープンが造れたという訳。更に、現代のような厳しいクラッシュテストや、シビアな排ガス検査が無く、大胆なクルマも造れました。1960年代のライトウェイトオープンは、そういう大衆食堂の賄い飯的なノリで造られていたのです。

ところが、時代は移り変わり、今や量産大衆車は『フォルクスワーゲン(VW)』の『ゴルフ』に代表されるFF車ばかりで、スタイルはずんぐりむっくり。フロントは重く、舵取りと駆動を同時に担当するから、走りのキレは無い。要は、麦芽の少ない1990年代の発泡酒宜しく、味で勝負する本気のピュアスポーツカーに仕立てるのは非常に難しいのが実情です。実際、フィアット&アバルトブランドが最後に2シーターオープンを造ったのは、2005年の『2代目フィアットバルケッタ』で、しかも中身はFF。やっぱり、販売台数の出ない2人乗りスポーツカーで、しかも一からFBプラットフォームを造るのはコスト的に無理…と諦めかけていたら、そこにキランと光るマツダのロードスターがあったと。もう1つの理由がコレ! 今、マツダの実力が世界を振り向かせるほどにスゴい! 何しろ、ロードスターの新型は6MTを完全新規。信じられないコキコキ爽快ストロークを実現しているのです。安全基準が緩かった初代よりボディー全長を縮めて、初代以来の1トン切りボディーも実現。そのオタクぶりったらあり得ないレベルに到達しています。しかーし! 長く造り続けるには、マツダの力だけでは無理。単独でロードスターを造っていては、生産台数が絶対的に足りない懐事情も。よって、破れ鍋に閉じ蓋というか、没落貴族と新興技術屋の奇跡のコラボというか、両者の目論見が見事に今回ハマった訳。実際、両車は驚くほど違う。特に124スパイダーだけど、全長4mオーバーでロードスターより14㎝ちょい長いし、車重も1100kg台で100kg以上重い。何より、外観はボンネット・ドアパネル・前後フェンダー・リアトランクと全部が違う。

手のかかるガラスや幌部は、窓枠を含めて見事にロードスターのまんまですが、他は全取っ替え。マフラーも専用の4本出しになっていて、外観印象はほぼオリジナル。一方、インパネは専用メーター・専用ハンドル・専用レカロシートを除いてロードスターと一緒なので、残念ながらイタリアン度はざっくり40%って感じになる。扨て、肝心の乗り味はロードスターとはかなり違っていて、アバルト専用のビルシュタインダンパーのおかげで、走り始めからビシっと硬め。勿論、ボディー剛性はオープンで高いから乗り心地は悪くないんだけど、ロードスターならではの走行5mでも感じられるヒラヒラ舞うような感触はありません。それから、エンジンの温もりがやっぱし違う。操作の軽いクラッチペダルやドライビングポジションの良さは、ロードスター同様にしっかりしてますけど、先ず回すと同時に「フォン!」と排気音が響き、存在感は上々。ところが、ココからが曲者で、1.4リッターのダウンサイジングターボなのに、アイドリング付近のトルクが結構薄い。踏んでも反応が鈍くて、数字以上に速さを感じない。でも、2000回転以上回すと突然、数値通りの生々しい力強さを発生! まさに、気紛れイタリアーノの性格は隠せず、走りに癖があるのです。因みに、実燃費は高速走行で12km台とイマイチ。ハンドリングも、ロードスターみたいなビッと切ってビッと動くわかり易さは残念ながら無いものの、長距離走ると路面のダイレクト感がビシビシ手に伝わってきて楽しい。ロードスターは素直でピュアな日本人妻、アバルト124スパイダーはちょい面倒なイタリア人ハーフ妻という感じか。あ、そう書くとどっちも楽しそうじゃん(笑)。


小沢コージ(おざわ・こーじ) 自動車評論家・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1966年、神奈川県生まれ。青山学院大学を卒業後、『本田技研工業』に入社。1990年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集を担当。1993年からフリーに。『週刊自動車批評』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)・『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)等。


キャプチャ  2016年11月21日号掲載

スポンサーサイト

テーマ : 新車・ニューモデル
ジャンル : 車・バイク

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR