【トランプUSA・識者に聞く】(01) 即効“バラマキ”政策の危険――竹森俊平氏(慶應義塾大学教授)

20161115 01
アメリカ大統領選におけるドナルド・トランプ氏の勝利は、異例の選挙戦略によるものだろう。「所得が伸びない」「工場が閉鎖される」といったアメリカの白人中間層の不満は、21世紀初頭からあった。ただ、その不満を政治の力に変えることは、誰も手がけてこなかった。前回の大統領選後に共和党が考えたのは、増えるヒスパニック系住民の票をどう取り込むか。しかし、比率は未だ白人のほうが多い。トランプ氏は逆に、白人中間層の怒りを燃え立たせ、ヒスパニック系の増加に対する危機感を煽った。白人とマイノリティー(人種的少数派)の対立を煽り立て、得票を狙うことは、これまでの政治家は避けてきた。「怒りに乗って選挙に勝っても、政策を遂行できない」と考えるからだ。トランプ氏の勝因は、アメリカの国益も無視し、「選挙に勝つ為なら何をしてもいい」という戦略を徹底したことにある。民主党のバラク・オバマ政権下で、アメリカ議会は上院・下院共に共和党が支配した。“捻れ”の中、共和党は意図的に審議拒否を続けた。国民は、“何も進まない政治”に怒りを増幅させた。

では、実際にトランプ氏はどんな政策を取るのか。「トランプ大統領になって良くなった」と国民が実感できる成果を直ぐに上げる必要がある。所得税の大減税をやるだろう。経済成長を加速させる効果は疑問だが、減税の恩恵は実感できる。“怒れる大衆”は、投票の見返りを求めている。法人税減税や公共投資等の“バラマキ”政策は、全て実行する筈だ。飽く迄も短期的には、アメリカの景気は良くなると思う。選挙戦でトランプ氏が訴えた他国への不満も、経済が上手く回っている間はあまり表面化しないだろう。ただ、バラマキは長期戦略に基づいておらず、アメリカ経済の好調は長続きしない。財政赤字が膨らみ、「減税だけでは経済成長に繋がらない」と露見した時が心配だ。オバマ政権が導入したアメリカ初の包括的な医療保険制度『オバマケア』の撤廃も焦点になる。民主党は強く反対し、恩恵を受けた国民も猛反発して、社会分裂が深刻になるだろう。国民の期待が剥がれ落ちた時、外国に責任転嫁する為にメキシコと貿易紛争を起こしたり、防衛問題も含め、他国に極端な要求をしたりする恐れがある。財政赤字を埋める為、日本等に基地の駐留経費の負担増を求めかねない。安倍首相は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領ら個性の強い政治家にも対応してきた為、トランプ氏への対応にも自信を示しているようだ。しかし、プーチン、トランプ両氏共に気紛れで、長期的な信頼関係を築けるかどうかには疑問が残る。 (聞き手/編集委員 佐々木達也)


⦿読売新聞 2016年11月11日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR