【トランプ劇場第2幕・現場から】(上) 白人労働者の“怒り”…「国境に壁を」10年前の運動

共和党のドナルド・トランプ氏(70)が、大方の予想を裏切り、当選を果たした今月8日のアメリカ大統領選。アメリカの政治・社会の現状に不満を抱く白人労働者らの怒りが、政治のアウトサイダーをホワイトハウスに送り込む原動力となった。アメリカ社会で旋風を起こしてきたトランプ氏主演の“劇場”は、これからも続く。

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「国境に壁を作り、不法移民を閉め出せ」――。会場にそんなスローガンが並ぶ。今年の選挙戦の光景ではない。ニューヨークから車で3時間余り。メキシコ国境から3000km以上離れたペンシルベニア州へイズルトン近郊で、2007年に行われた住民デモだ。当時のトランプ氏は未だ不動産王のテレビスターで、政治の表舞台には登場していない。「約10年前の我々の主張は間違っていなかった。今回の大統領選でトランプ支持が全米に広がったことが、それを証明している」。運動を率いたダニエル・スマリグリオさん(33)は、そう振り返る。グローバル化で産業が衰退した東部から中西部に広がる“ラストベルト(錆び付いた工業地帯)”の一角。当時、スマリグリオさんたちが「“白人の街”が一変した」と危機感を募らせたのは、地域の主要産業が、炭鉱から工業団地へ誘致された加工業へと移ったからだ。工場労働者として低賃金で働く中南米系の移民が一気に増え、店舗にはスペイン語の看板が目立つようになった。市当局は2006年、「不法移民が増えて治安が悪化した」等として、全米に先駆けて不法移民を閉め出す独自の条例を纏めた。しかし、「移民政策に自治体が関与するのは違憲だ」と裁判所が判断し、条例は日の目を見なかった。共和党員だったスマリグリオさんは住民デモで党に協力を求めたが、「人種差別に繋がるから」と距離を置かれた。地元メディアからも批判され、運動は次第に行き場を失った。

スマリグリオさんは当時、警備員の仕事をしていたが、雇用先の買収で職を失った。この10年近く、職を転々として、半年前から再び無職だ。民主党が強いペンシルベニア州では、移民は生活保護等で手厚く保護される一方、自分たちのような白人層が顧みられることは少ないと感じる。「民主党も共和党も腐り切っているからだ。白人層は、“政治”に見捨てられた存在なんだ」と語気を強めた。今年6月に出版されたべストセラー『ヒルビリーエレジー(哀歌)』は、スマリグリオさんのような白人層の“怒り”を真正面から取り上げた。“田舎者”を指す“ヒルビリー”という言葉は、北東部から南西に延びるアパラチア山脈の周辺地区出身の白人のことで、著者であるJ・D・バンス氏の自伝的作品だ。今月9日の『ニューヨークタイムズ』電子版の寄稿で、同氏はこう分析した。「ラストベルトの白人労働者層がトランプ大統領を生んだことは、疑いようがない」。今回の大統領選で、スマリクリオさんは怒りの“受け皿”を見つけた。トランプ氏が過激な言動を繰り返し、女性蔑視の姿勢に批判が集中したことは承知の上だ。「ニューヨークの億万長者でプレイボーイの彼が完璧な人間でないのは、前からわかっている。それより大事なのは、彼が権威に怯まず立ち向かう姿勢だよ」。事前の予想を覆し、トランプ氏は民主党が伝統的に強いペンシルベニア州も制した。それでも、スマリグリオさんの怒りは収まりそうにない。仲間と始めたインターネットラジオの政治番組を足掛かりに、2年後の中間選挙で、公然とトランプ不支持に回った共和党下院議員の“落選運動”を展開するつもりだという。「民主党は勿論、共和党にもうんざりだ。トランプ大統領の下、アメリカを我々の手に取り戻すんだ」。 (吉池亮)


⦿読売新聞 2016年11月11日付掲載⦿
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