【トランプ新政権の課題】(01) 異端児、アメリカ再生なるか――移民流入に白人憤り、公約が国内に分裂生む

今月8日のアメリカ大統領選で、共和党のドナルド・トランプ氏(70)が劇的な勝利を収めた。政治経験の無い異端児は、多様な国民を1つに束ね、内憂外患に喘ぐアメリカを再生できるのか。“偉大なアメリカの復活”を標榜するトランプ次期大統領の課題と公約を点検する。

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「イスラム系アメリカ人はどこへも行きません。脅されたり、除け者にされたりすることも無いでしょう」――。アメリカの『イスラム関係評議会(CAIR)』のニハード・アワド代表は今月9日の声明で、アメリカ国民全ての人権を尊重するよう、トランプ氏に求めた。過激派組織『IS(イスラミックステート)』が主導するテロの頻発は、アメリカ国内の“イスラモフォビア”(イスラム教徒に対する嫌悪感)を助長した。そんなムードに乗じて、イスラム教徒の入国禁止を唱え、保守的な白人層の心を掴んだのが、他ならぬトランプ氏だ。「子供を学校に行かせるのが怖い」「家族の行く末が心配だ」。イスラム系アメリカ人の『ツイッター』上では、大統領選の直後から苛めや嫌がらせを恐れる呟きが相次いでいる。そこには、2001年9月11日に起きた同時多発テロの直後に匹敵する緊張感が漂う。アメリカは、350種類以上の言語が混在する“人種の坩堝”だ。その多様性が、活力の源泉でもある。だが、移民の流入が人種の構成を急速に変え、多数派の白人に鬱屈した感情を齎している。アメリカの全人口に占める白人の比率は、1965年の84%から、昨年には62%まで低下した。2050年頃には50%を割り込む見通しだ。

ヒスパニック(中南米系)やアジア系の台頭に苛立ち、移民への寛容さを失う白人は少なくない。アメリカの分断は、白人と非白人に限らない。アメリカの国勢調査局によると、上位10%地点の家計所得は、1995年からの20年間で20%増えたのに対し、下位10%地点は1%減った。グローバル化や市場化の副作用とも言える高所得層と低中所得層の格差は、そう簡単に縮まらない。“白い革命”――。トランプ氏の予想外の勝利を、こう表現するメディアもある。移民の増加や格差の拡大に憤る白人の低中所得層が、既存の政治家に“NO”を突きつけ、柵の無い実業家に変革を委ねたという訳だ。だが、排斥主義や保護主義に傾くトランプ氏の公約は、国内に深刻な亀裂を残した。「今こそ、分裂の傷を縫合し、一丸となって前進する時だ」。トランプ氏は同9日未明の勝利宣言でアメリカ国民の結束を促したが、差別的な発言で敵と味方を二分してきたツケは大きい。もう1つの問題は、保守とリベラルの分断である。『ピューリサーチセンター』の今年の調査によると、「ライバルの政党が極めて好ましくない」と答えた国民は、共和党員で58%、民主党員で55%。2008年の32%・37%から大幅に上昇しており、両者の対立が一層深まっていることがわかる。共和党は8年ぶりに政権を奪還しただけでなく、上下両院も制して“捻れ”を解消した。それでも、アメリカ経済の底上げや、テロとの戦いを巡る超党派の協力は欠かせない。「民主党第一でも共和党第一でもない。我々はアメリカ第一だ」。バラク・オバマ大統領は、同9日に読み上げた声明で、こう指摘した。8年間でなし得なかった“1つのアメリカ”という目標は、トランプ氏にそのまま引き継がれる。 (小竹洋之)


⦿日本経済新聞 2016年11月11日付掲載⦿
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