【トランプ劇場第2幕・現場から】(中) 人気は“メディアの産物”…視聴率重視、無批判に報道

20161116 08
「メディアは嘘で溢れている」――。アメリカ大統領選で、共和党のドナルド・トランプ氏(70)は、新聞やテレビを激しく攻撃し続けた。しかし、ニューヨークで1980年代に幕を開けて以降、“トランプ劇場”の観客が増え続けたのは、タブロイド紙やテレビ等、トランプ氏が敵視するメディアの存在があったからだ。「どうか私を責めないでほしい。本当に、本当に申し訳ないと思っている」。共和党予備選でトランプ旋風が吹き荒れた今年5月、アメリカの政治専門紙『ポリティコ』電子版に『タブロイド記者の告白』と題する手記が掲載された。書いたのは、タブロイド紙『ニューヨークポスト』で1980年代にゴシップ面を担当していた女性編集者(60)だ。記事でトランプ氏を何度も取り上げ、「虚飾塗れの不動産王をセレブに祭り上げてしまった」と嘆いた。持ち上げる記事ばかりではない。事業の失敗に同業者との諍い、果ては浮気の噂等も容赦なく報じた。トランプ氏側から虚偽のネタが寄せられたこともあったという。読者の関心は高く、次第に、他のタブロイド紙も競うようにトランプ氏を取り上げた。タブロイド紙で注目を集めたトランプ氏は、2000年代に入るとテレビ番組に出演。全米規模の人気を得て、大統領選に挑んだ。

「街にサーカスがやって来たようなものだ。アメリカにとって良いことではないのかもしれないが、うちにとっては最高だ」。ニューヨークに本拠を置くアメリカ3大ネットワークの1つである『CBS』のレスリー・ムーンベスCEO(67)は今年2月、系列局や広告業界との会合で、トランプ旋風をそう歓迎した。ニュース番組等の視聴率を押し上げ、広告収入が大幅に伸びたからだ。「兎に角、物凄い収益だ。ゴー、ドナルド! 酷い物言いで申し訳ないが、このまま突き進んでほしい」。旋風は衰えず、9月の最初のテレビ討論会の視聴者数は、過去最多の8400万人に上った。ムーンベス氏は先月、出席したイベントで8ヵ月前の発言の真意を問われ、こう語った。「あれは冗談だったんだ」。大統領選が終わっても、ジャーナリズムの現場には苦悩が残る。ケーブルテレビ局の創設にも関わった経験があるスティーブン・ブリル氏(65)は、トランプ人気に群がるメディアの習性を「交通事故に群がる野次馬の欲求に応えるようなもの。メディアにとっては“諸刃の剣”だろう」と指摘する。トランプ氏は来年1月に大統領に就任するが、不動産セミナー『トランプ大学』の詐欺問題や、運営する慈善団体の違法な寄付金集め等、『ワシントンポスト』等の有力紙から厳しい追及を受けたトランプ氏の様々な不正疑惑が消えることはない。歴代大統領選候補が慣例的に行ってきた確定申告書の公開も最後まで拒み、納税の実態も不明のままだ。社会学者としても知られるコロンビア大学ジャーナリズム大学院のトッド・ギットリン教授(73)は、ゴシップ記事を足掛かりに、テレビの人気で権力の頂点に上り詰めたトランプ氏を、「徹頭徹尾、メディアの産物」と断じる。その上で、多くの疑惑を抱えるトランプ氏を無批判に取り上げ続けたとして、テレビにはとりわけ手厳しい。「調査報道や具体的な分析よりも、“劇場”的な要素ばかりを重視してきたからだ。トランプ氏の台頭は、“客観性”というジャーナリズムの本分を忘れたメディアが自ら招いたものだ」。 (吉池亮)


⦿読売新聞 2016年11月12日付掲載⦿
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