【トランプ革命】(下) 政治の分断、広がる恐れ

20161116 07
「政権移行の成功に全力を尽くす。(次期政権も)皆、同じチームの一員だ」――。大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利してから約9時間後、バラク・オバマ大統領はホワイトハウスで声明を読み上げた。中庭に集まった150人のホワイトハウス職員たちは皆、意気消沈し、目を閉じる者や、茫然と空を見上げる者、中にはすすり泣く者までいた。医療保険加入を義務付ける『オバマケア』・不法移民の強制送還免除・同性婚の容認等、オバマ政権は数々のリベラル寄りの政策を、共和党の同意抜きに進めてきた。外交・安全保障でも、共和党が反対するイラン核合意・キューバとの国交回復・気候変動防止の枠組みである『パリ協定』の締結等を、レガシー(政治的遺産)として残そうとしている。共和党は予算案に反対して、政府機関の一部を機能停止に追い込む等の手法で、オバマ政権を追い詰めてきた。国民の経済活動と社会に対する中央政府の干渉を必要最低限に留めようとする“小さな政府”が基本原則で、連邦政府が国民に保険加入を義務付け、銃で身を守る権利を制限するようなオバマ政権の方針は、そうした理念にそぐわない。民主党には、そのやり方は“代案無き反対”に映った。

2014年中間選挙で共和党が上下両院を握ってからも、オバマ氏と共和党が歩み寄って何かを成し遂げることは殆ど無かった。来年1月からは、上下両院とも支配するトランプ共和党政権が始まる。トランプ氏は、企業への大幅減税を主張する点では“小さな政府”の共和党と一致するが、連邦政府による公共投資拡大を唱える点では民主党に近く、政策の軸足が定まらない印象は拭えない。“国境の壁建設”等の主張も、実現性に疑問符が付く。トランプ氏と共和党指名候補を争った元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏は、「トランプ氏の約束が空手形だったことが明らかになれば、国民は『裏切られた』と感じて不満を募らせ、この国の分断は更に広がるだろう」と懸念を示す。左派のご意見番として知られる映画監督のマイケル・ムーア氏は、トランプ氏当選の翌朝、「共和党がこの8年でしてきたように、抵抗と妨害で戦おう。民主党議員でその気がない者は去れ」と呼びかける“提言”を発表した。議会での徹底的な妨害で政治を麻痺させ、国民の不満を煽って、次の選挙戦勝利に繋げる対決路線を唱えたものだ。政治の二極化と機能不全が有権者の政治不信を生み、ワシントン政治とは無縁の異端児をホワイトハウスにまで押し上げた。そして、分断の広がりは、2大政党への不信感を更に拡大させる恐れもある。そうした悩める大国の舵取りという重責が、政治経験ゼロのトランプ氏の前に待ち構えている。

               ◇

アメリカ総局 小川聡・尾関航也・黒見周平・山本貴徳/政治部 今井隆が担当しました。


⦿読売新聞 2016年11月13日付掲載⦿
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