【トランプ新政権の課題】(03) “人種のるつぼ”転換点――IT、技術者確保に不安も

20161117 01
トランプ政権の誕生で最も打撃を受けそうなのは、アメリカに約1100万人いるとされる不法移民だ。トランプ氏は“反移民”を看板に掲げ、メキシコ国境に壁を造り、全ての不法移民を強制送還する強硬策を訴えてきた。「合法的な移民や難民の受け入れも制限する」と公約。移民を活力としてきた“移民国家アメリカ”は、大きな転換点を迎える。「朝、目覚めた時、自分がどうなるのか怖くてたまらなかった」――。不法移民の若者の1人は、大統領選の翌9日、自身の『フェイスブック』に不安な思いを書き込んだ。バラク・オバマ政権の移民制度改革で一時的な滞在資格を得た“ドリーマー”と呼ばれる層だ。オバマ大統領は2012年、子供の時に親に連れられて不法入国した若者に、合法的な滞在資格と労働許可を与える大統領令を出した。約70万人が恩恵を受けた。トランプ氏は、こうした大統領令の撤回を公約し、ドリーマーたちも強制送還の対象になりかねない。トランプ氏は、不法移民を取り締まる捜査官の数を1万5000人と「3倍に増員する」と言う。「来年1月の大統領就任と同時に、不法移民の強制送還を始める」とも宣言した。ただ、全ての不法移民の強制送還は、人件費を含め、最大で30兆円を超える費用がかかると推計される。

選挙スローガンだった国境の壁建設も最大で約3兆円を要するとされ、維持費を含めれば費用は膨れ上がる。トランプ氏は「メキシコに払わせる」とするが、同国政府は拒否している。アメリカで就学・就職しているドリーマーや、アメリカ生まれの子供がいる不法移民の家族を引き裂く強制送還は、社会を不安定にさせかねない。外国人のアメリカ就労も規制されそうだ。トランプ氏は、専門技術を持つ外国人がアメリカで働くのに必要なビザ(査証)『H1B』の規制強化か、原則廃止も公約にした。技術者不足に悩むシリコンバレーを中心としたアメリカのIT(情報技術)業界は、H1Bの発給枠拡大を求めてきた。成長を支える優秀な技術者の確保が難しくなりかねない。大統領選後にエネルギーや金融の株価が上昇する中で、ITは下落した。トランプ氏は、①学生や研究者らの交換プログラムに使う『J1ビザ』の原則廃止②外国人労働者への永住権(グリーンカード)発給の一時凍結③アメリカで生まれた子に自動的に国籍を与える制度の廃止④難民を審査する基準を厳しくする――も表明。技術者らの高度人材を含めて、外国からアメリカへの人の流れを止め、アメリカ人の雇用を増やす。「これから10年間で、アメリカの国内総生産(GDP)を年平均0.3ポイント押し下げる」。超党派の非営利組織『責任ある連邦予算委員会』は、移民規制案等を実行した場合の影響を、こう試算した。アメリカでは、移民の起業が全体の3割弱を占める。アメリカを代表する500社の4割は、移民やその2世が立ち上げた。“移民はアメリカ経済の活力”というのが、専門家の共通認識だ。トランプ氏を大統領に押し上げたのは、「職を奪われる」として移民に不満を持つ白人労働者の支持だ。看板政策の移民対策を実行しなければ、支持者は離れる。“人種の坩堝”というアメリカの強みが、危機に曝されている。 (芦塚智子)


⦿日本経済新聞 2016年11月13日付掲載⦿
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