【トランプ劇場第2幕・現場から】(下) SNS、悪意の増幅…過激なニュース拡散、“事実”に

20161117 05
共和党のドナルド・トランプ氏(70)が制した今回のアメリカ大統領選挙でも、SNSが大きな役割を果たした。8年前、バラク・オバマ大統領はSNSを巧みに駆使して勝利したが、今回はSNSで急成長した右翼系メディアが、トランプ氏の過激な主張を増幅。アメリカ社会の“分断”は、益々広がっていった。大統領選投票日前日の今月7日。激戦区であるノースカロライナ州ローリーで開かれたトランプ氏の集会には、熱心な支持者たちが詰めかけた。「この国には変化が必要なんだ。彼は変化を体現している」――。会場で熱く語る会社員のケリー・ダンラップさん(46)は、「民主党を露骨に応援する新聞やテレビの報道はフェアではないから、目にしない」と言う。では、どこでニュースを得ているのか。「“フェイスブック”だ」。即座にそう答えた。「どの報道機関も100%信じられる筈がない」と言うリッチ・カマーチョさん(31)。フェイスブックでよく見ているという右翼系サイトの名を挙げた。アメリカのフェイスブックは、自分のページにニュースが表示される為、日々のニュースはフェイスブックで得る人が増えている。アメリカの民間調査機関が今年行った調査では、成人の44%がニュースをフェイスブックや『ツイッター』等のSNSから得ていた。1980~2000年代初めに生まれた“ミレニアル世代”を中心に、若年層ほどその傾向は強まる。フェイスブックのニュースは、『ニューヨークタイムズ』等の有力紙のサイトだけではなく、無名のサイトの記事も同列に表示される。

更に、利用者の傾向を分析し、好みのニュースを自動選別する為、これがトランプ支持者たちを右翼系サイトに誘引する結果となった。ローリーに本拠を置く新興のインターネットサイト『ライトウィングニュース(RWN)』は、フェイスブックで急成長した文字通り“右翼系メディア”の代表格だ。オバマ大統領に対する激しい批判で注目を集め、サイトのフォロワー(閲覧者)は750万人に上る。選挙期間中に配信したのは、トランプ氏の主張をなぞったものが殆ど。サイトの創始者であるジョン・ホーキンズ氏(45)は、「フェイスブックでフォロワー数が伸びたことで広告収入が増え、経営的に成り立つようになった」と語る。スタッフは20人程度。論評等が多く、取材は殆どしない。ホーキンズ氏は報道機関で働いた経験は無いが、「我々の仕事は、ジャーナリスト・活動家・批評家の3つが揃ったハイブリッドのようなもの」だという。新興サイトの中には、民主党を支持する急進的な左派系サイトもあるが、圧倒的に多いのは白人層に支持される右翼系サイトだ。“選挙の不正”を公然と主張し、民主党のヒラリー・クリントン氏のメール問題等を巡って、悪意が込められた内容も多く、明らかな誤報も少なくない。同じ考えを有する者同士で情報を共有・転送できる為、あっという間に拡散する。トランプ氏の誤った主張が、こうしたサイトを通じて“事実”として独り歩きした。大手ニュースサイトの元編集長で、現在は雑誌編集者のマックス・リード氏(31)は、「トランプ氏の勝利を下支えした右翼系メディアの存在は、アメリカ社会の中で無視できないほど大きくなった」と感じている。「共感するニュースだけを選別して提供するSNSは、自分の考えを強固にさせるだけ」。SNSがメディアの役割を担うようになった問題点を指摘し、こう嘆いた。「このままでは、アメリカ社会の分断は広がる一方だ。SNSがメディアとして定着してしまうと、選挙で有権者が正しい判断をすることが益々難しくなる」。 (有光裕・吉池亮)

■対イスラエル政策“未知数”  オデッド・エラン氏(テルアビブ大学安全保障問題研究所上席研究員)
トランプ氏は選挙期間中、エルサレムをイスラエルの首都と認め、「アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移す」と表明する等、イスラエルの右派を喜ばせる発言を繰り返した。これはユダヤ票取り込みの為であり、実際の政策にどこまで反映されるかは未知数だ。新政権にとって、イスラエルとパレスチナの和平問題は最優先とはならないだろう。1993年のオスロ合意以降、アメリカの仲介による和平交渉は悉く失敗してきた。複雑な要素が絡む和平問題について、トランプ氏が精通しているかどうかは大いに疑問が残る。しかし、入植地建設を非難する等、イスラエルに厳しい立場を取ってきたオバマ政権の方針が大きく転換されることは間違いない。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプ氏との個人的な信頼関係の構築から始め、「イスラム過激派が台頭する中での和平交渉再開は賢明でない」というイスラエルの立場について理解を求めるだろう。一方、トランプ氏がイスラエルにだけ良い顔を示せば、パレスチナは国連安全保障理事会にイスラエルを非難する決議を求める等、外交戦略を強めることになるだろう。 (聞き手/エルサレム支局 上地洋実)


⦿読売新聞 2016年11月13日付掲載⦿

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