【ヘンな食べ物】(13) ブータンのびっくり卵酒

ヒマラヤの小国・ブータンには、「飲食物を何でも一緒にしてしまう」という習慣があって驚かされた。ご飯におかずをぶっかけて食べるのは未だわかるが、あられやポップコーンのようなお茶請けをミルクティーの中にドボドボ入れてしまうのだ。折角のお茶が、ドロドロの不気味な液体と化す。何故、そんなことをするのか? 村から村へ山を歩く旅に出てわかったのだが、ブータンの村の家庭には食器があまり無いのだ。その代わり、各人が常にプラスチックか陶器の“マイカップ”を携えていて、お茶とお茶請けが出た時にパッと懐から出す。マイカップは1つしかないから、全てそこに入れてしまうという訳。もっと面白いのは酒。標高4500mの峠道を越え、山小屋に着いた晩のこと。疲れと冷えと高山病でぐったりしていると、ブータン人の若い相棒が「タカノさん、“ゴンド・アラ”を飲みますか? 元気になりますよ」と言う。凄く嬉しかった。“ゴンド”は卵、“アラ”は米や麦の焼酎で、つまり卵酒を拵えてくれるというのだ。焼酎を鍋で温めてくれたところまではいい。その後、彼は卵を取り出すと、フライパンでジャージャーと炒め、卵焼きをドボンと焼耐のコップに放り込んでにっこり微笑んだ。「はい、ゴンド・アラ」。違う! これは“卵酒”じゃない。“卵焼きが入った焼酎”だ。やっと理解したのは、ブータンでは時に酒と肴も一緒にしてしまうということ。山村では、卵焼きもご馳走の部類だ。仕方ない。先ず、スプーンでコップの中の卵焼きをザクザク突き崩してから、グチャグチャにかき混ぜて飲んだ。卵焼き混じりの熱い焼酎は、飲み物なのか食べ物なのかも定かでなく、決して美味いものではなかったが、何だか不思議な懐かしさがあった。そして飲み(食べ)終わると、日本の卵酒同様、とても元気が出たのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年11月17日号掲載
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