【男の子育て日記】(27) ○月×日

7月4日 日曜の夜からいきなり、一文の体調が悪くなった。確かに最近、咳は出ていたが、それ以外は特に心当たりも問題もなかった。体温計で計ると38℃台の高熱。頭だけでなく手足も熱い。こんなことは初めてだ。当然、保育園は休み。近所の小児科に連れて行くと、「突発性発疹か胃腸炎ではないか」と診断された。赤ん坊は、生まれてから暫くは母親から貰った免疫があるから丈夫だが、その効き目も切れてきたのだろう。処方された坐薬を一文の肝門に入れると、途端に平熱に戻った。しかし、くっ付いていないと心細いようで泣きじゃくる。最近生えてきた前歯で噛み付いてくる。くすぐったい。一文の面倒を見ながら、文庫のゲラの戻しと新刊の単行本のカバー指示と洗濯と風呂掃除まで済ませる俺は、どこからか表彰状の1枚ぐらい貰ってもいいと思った。

7月5日 大分マシになったが、本調子とは程遠いようで、こちらがトイレとか少しでも姿が見えなくなると、泣いて甘えてくる。だから噛むなって。絶好調のバロメーターでもある掴まり立ち・台所までハイハイ・フルスマイルは影を潜めたまま。いつもは取り上げるが、テレビのリモコンを与えてみる。雑菌だらけのリモコンが唾液でべトべトになるが、しょうがない。少しでも本人の気が紛れるなら。洟をズルズルと言わせる我が子を抱き上げて、「可哀想に可哀想に」と、つい口から零れてしまう。肌とお腹が弱いのは父親から。気管支が弱いのは母親からか。いいとこ似ないなぁ。こうやって気を揉むのが、親というものなのか。記子も、いつもより早く帰宅。事細かにメールで報告しているのだが、やはりいても立ってもいられないようだ。バトンタッチして一文を抱っこ。「風邪が流行っているとは聞いていたけどね」(妻)、「今後は自力で抵抗力を付けていかなければならないんだからな」(樋口)、「それにしても可哀想」(樋口・妻)。しかし、一文について話していると、「そういえば、この人と夫婦なんだよなぁ」と今更ながら思う。あまり考え無しに結婚したものだから忘れがちだが。記子は一文に、自分のスマホを与える。この子が一番好きな玩具だ。どんな鳴り物より、ぬいぐるみより、奮発して買ってあげた『カワイ』のミニピアノより、ママのスマホに夢中。でもな一文よ、パパが見ている限り、ママはあまり手を洗わないぞ。トイレのドアは常に開けっ放しだし。

7月6日 快方へ。未だ少しだけ咳が出るものの、ここ数日の状態を説明し、保育園に預ける。家に戻るとドッと疲れが。久し振りに昼寝をさせてもらう。45歳に子育てはハード過ぎるぅ。

7月11日 保育園の離乳食を完食した様子。漸く元に戻ったか。胸を撫で下ろす。

7月15日 仰向けの僕をベッドにして寝ていたのが、股間までずり下がる。そのままにしておいたら、「ギャッ!」と叫び声を上げてしまった。一文よ、パンツ越しとはいえ、パパのチンコを噛むな! でも、前歯も伸びてきて、また成長したな。パパは嬉しいぞ。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2016年11月17日号掲載
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