【トランプ新政権の課題】(04) 巨額減税、危うい賭け――成長失敗なら重いツケ

20161117 07
ドナルド・トランプ次期大統領の経済再生策は、前例の無い巨額減税とインフラ投資が軸となる。ただ、連邦政府債務は既に20兆ドル(約2160兆円)弱と、アメリカの財政に余裕は無い。成長と財政再建を両立できなければ、“トランプ減税”は重いツケを残す。「トランプ氏と下院共和党の税制改革案は殆ど同じだ」――。今月11日、共和党のポール・ライアン下院議長はテレビ番組でのインタビューで、そう持ち上げた。ライアン氏は選挙戦中、トランプ氏の暴言を批判して関係が悪化したが、同氏の予想外の大勝で修復を急いでいる。トランプ氏は法人税率を35%から15%に下げ、個人所得税も引き下げる大減税案で大統領選を勝利した。税財政は議会の決定権限が強く、“トランプ減税”を実現するには、議会指導部との緊密な協力が必要になる。トランプ氏は選挙戦中に減税案を修正し、下院共和党案に近付けている。当初は「個人所得税の最高税率を39.6%から25%に下げる」としていたが、下院共和案の33%に下げ幅を圧縮した。株式等の資産売却益の減税規模も縮小。当初は「10年間で10兆ドルの歳入不足が発生する」と懸念されたが、不足幅は4兆~5兆ドルに留まるとされる。ただ、連邦政府債務は既に20兆ドル近くに膨らんでおり、財政悪化の懸念が強まることに変わりはない。

トランプ氏は「経済成長による税収増でカバーする」と言うが、アメリカの調査機関は「長期金利が8%台に跳ね上がるほど財政が悪化する」と懸念する。トランプ氏の税制改革案は、1980年代のロナルド・ウィルソン・レーガン政権を模している。同政権は1981年、5年で7500億ドル規模の大型減税を決めた。財政赤字の国内総生産(GDP)比は、2.5%から、2年で5.9%まで拡大。長期金利も10%台に上昇し、ドル高が加速した。それが1985年の『プラザ合意』に繋がり、日本のバブル景気とその崩壊を招いた。「高速道路・橋・トンネルを造る」。トランプ氏が同9日の勝利宣言で言及した数少ない経済政策は、インフラ投資による雇用創出だ。大統領選では、10年間で1兆ドルという史上最大のインフラ投資案も提示。同案は「GDPを年0.6%押し上げる」と試算されるほど、強力な経済効果がある。アメリカは、インフラの老朽化が深刻だ。嘗て自動車生産で栄えたミシガン州フリント市は、水道管が腐食して鉛が流出し、住民に健康被害が起きた。高速鉄道の脱線事故も全米で頻発している。老朽インフラの修復には8年間で3兆6000億ドルが必要とされ、トランプ氏の巨額投資案を加えても追いつかないほどだ。問題は、巨額減税と同様に財源だが、同氏は「歳入中立で実現する」と主張し、民間資金を取り込む考えだ。インフラ投資の費用を税額控除することで民間から資金を集め、事業から得た収益を配当等で還元する。しかし、必要なのは老朽化した橋や道路の修復で、こうした事業で収益を上げるのは極めて難しい。トランプ氏の目論見通りに巨額の民間資金を集めるのは、至難の業だ。トランプ氏の税財政案は、飽く迄も骨組みに留まる。アメリカの企業は高税率を嫌って、海外に2兆ドルを超す資金を貯め込み、国際競争力を失った税制の改革は待ったなしだ。インフラ整備は雇用増の起爆剤となる。税財政改革を、どう現実策に落とし込むか。過激発言に終始してきたトランプ氏の政権運営の試金石となる。 (河浪武史)


⦿日本経済新聞 2016年11月16日付掲載⦿
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