【トランプUSA・識者に聞く】(04) 日本、秩序維持の調整役に――細谷雄一氏(慶應義塾大学教授)

20161118 04
今回のアメリカ大統領選は、若者と中高年、大卒者と高卒以下の者、グローバリズムの勝者と敗者の間の分裂を示した。これは、今年6月のイギリスの国民投票と共通する。グローバリズムの敗者が『ヨーロッパ連合(EU)』離脱に賛成し、トランプ氏に投票したと言えるだろう。グローバリズムの敗者が何故、このような投票行動を取ったのか。1980年代以降の“小さな政府”を志向した新自由主義の潮流が、その後の世界を変えた。新自由主義は、市場経済と福祉国家の両立という“戦後コンセンサス”を壊した。個人主義と自己責任の新自由主義イデオロギーの下で、社会的弱者が切り捨てられた。冷戦後のグローバル化が、それを加速した。先進国で、40代以上の中高年の自殺が増えているのはアメリカだけだ。未来に絶望した中高年の白人を、冷戦後四半世紀、政府が見捨ててきた。今回は、見捨てられた人たちの革命だと思う。他方、来年、アメリカが第1次世界大戦に参戦した1917年から100年になるのは象徴的だ。参戦を機に、アメリカは建国以来の孤立主義から転換し、国際政治に関与する。“パックスアメリカーナ(アメリカによる平和)”の始まりだ。

だが、トランプ大統領が誕生する来年は、その“終わりの始まり”となる可能性がある。アメリカが“明白なる使命”を掲げて、国際秩序を維持していくことを拒絶しているからだ。米英は、“法の支配”に基づく国際秩序を擁護してきた。しかし、それを守る為のコストを払う意欲を失っているとなれば、これからは“ジャングルの鍵”――つまり強い者が正しい世界になる。弱い者は犠牲になる。多くの地域が不安定化していく。トランプ政権下でアメリカが軍事力を大幅に縮小するとは思わない。だが、アメリカの利益やアメリカ国民の生命を守る為に軍事力を使うことがあっても、国際秩序や他国の国民を守る為に使わなくなるだろう。アメリカは暫くの間、伝統的な国際主義と新しい孤立主義との間で揺れ動くだろう。トランプ氏は、どちらがアメリカの利益か敏感になり、イデオロギーや原則ではなく、悪く言えば節操なく、よく言えば柔軟に対応しよう。日本との同盟やアジアへの関与が利益と考えれば、そのような方向に進み、日本がアメリカに依存する姿勢が顕著であれば、アメリカの関与は後退する。その意味で昨年、安保法制が成立したのは絶妙のタイミングだ。トランプ氏は「アメリカが攻撃を受けても日本はアメリカを助けられないではないか」と非難したが、安保法制で限定的ながら集団的自衛権行使が可能になったことは大きい。軍事力に制約がある日本は、英米に代わって国際社会のリーダーになることはできないが、調整役として、国際社会が受け入れ可能なアイデアを提供していくべきだ。それにより、“法の支配”に基づく国際秩序を維持する為の貢献ができる筈だ。 (聞き手/編集委員 笹森春樹)


⦿読売新聞 2016年11月16日付掲載⦿
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