【電通の正体】(14) 電通1強時代…基礎から学ぶ広告業界

広告業界は、テレビや新聞等“マス4媒体”の広告が低下する中、インターネット広告が急伸。グローバル化も進む等、変革期にある。 (『マッキャンエリクソン』シニアプランニングディレクター 松浦良高)

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「広告業界はわかり難い」と言われるのは、広告自体は誰もがよく目にするのに対して、広告に携わる人はそれほど多くないことや、広告料等お金の動きが関係者以外には想像し難い為だ。広告業界における基本的なお金の流れを見ると、広告主の企業が起点になる。広告主は、特定の商品やサービスの認知、或いは自社全体のブランドイメージを上げる為に、広告会社へ広告制作を依頼する(図1)。広告主が広告会社に支払うお金は、大きく“広告制作費”と“媒体(メディア)費用”に分かれる。媒体とは、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・インターネット等だ。広告制作費は広告の中身を作る為の費用で、例えばテレビコマーシャル(CM)の場合、撮影費やタレントの出演料等がこれに当たる。一方、媒体費用は制作した広告をメディアに掲載する為の費用になる。広告会社は媒体社に媒体費を支払い、制作した広告を納品し、世の中に広告が流れる。消費者がその広告を見て、商品・サービスを認知し、購入意欲が高まることで商品が売れ、元々の依頼者である広告主企業の利益に繋がる。取扱高の大きいテレビCMについては、番組によって広告会社の“買い切り枠”というものがある。これは、特定の番組に流すCM枠を、広告会社が顧客からの発注を受けず、一括して放送局から買い取る仕組み。魅力的で注目度の高い番組のCM枠を広告会社が買い取って販売することで、放送局に安定収益を約束でき、自らは独占販売できる枠を武器に、広告主に営業できるメリットがある。広告会社の中でも、買い切り枠を多く持っているのが『電通』だ。買い切り枠は、広告主に売れなければ広告会社が損失を抱えることになる為、リスクもある。その点、電通は大企業の広告主を数多く抱えているからこそ、買い切り枠を購入することができるのである。

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昨年における日本の総広告費は、6兆1710億円に上る。「広告費は景気と高い連動性がある」と言われている通り、2007年に7兆円を超えたものの、その後はリーマンショックや東日本大震災の影響もあり、2011年には5兆7091億円まで落ち込んだ(図2)。しかし、最近4年間は連続して回復基調にある。総広告費の構成と趨勢を見ると、広告業界に起きている顕著な変化が見て取れる。広告費の媒体別市場規模(図3)を見ると、“マス4媒体”と呼ばれるメディアの内、新聞や雑誌の広告費が縮小し、対照的にインターネットが急増している傾向が、はっきりと見て取れる。インターネット広告市場は1兆1594億円。2014年に初めて1兆円を超え、現在も前年比10.2%増と2桁成長を遂げている。広告業界では、注目度の高いメディアの広告価値が高まる為、この数年のスマートフォン等の新デバイスの発展に伴うインターネットの利用者や利用時間の伸びが、広告費の伸びにも反映されている。現在、インターネット広告が広告費全体に占める割合は約18.8%だが、市場規模もシェアも伸びしろは大きいと思われる。インターネット広告の内、特に“運用型広告”が6226億円と大きく、前年比21.9%増と急速に成長している。これは、アドテクノロジー(ITを生かした広告技術)広告枠や広告内容等を自動的に変動させ、広告の効果を高めるインターネットならではの出稿方式だ。この運用型の広告手法は、今後も益々拡大が見込まれる。大手広告会社も、インターネット広告会社との関係構築に動き出した。電通は2008年、インターネット広告大手『オプト』への出資比率を引き上げ、翌2009年には『サイバーコミュニケーションズ』を完全子会社化した。『博報堂DYホールディングス』も同年、『アサツーディケイ(ADK)』と共同設立した『デジタルアドバタイジングコンソーシアム』を連結子会社化した。

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日本の広告会社のランキング(図4)を見ると、電通の売上高が大きく、広告市場規模の4分の1を占めている。“広告業界の巨人”と言われる理由だ。このように、1社が寡占する状況は、海外ではあまり見られない。電通と共に“電博”とよく称される博報堂は、電通には2倍以上の差を付けられている。3位のアサツーディケイと博報堂との間にも、2倍以上の大きな差がある。この10年間にM&A(企業の合併・買収)等もあったが、この上位のランキングに大きな変化は無かった。欧米系の広告会社は財務情報を公開していないが、日本市場で10位以内に入る企業もある。一方、世界全体での広告会社グループのランキング(図5)を見ると、イギリスの『WPP』、アメリカの『オムニコムグループ』、フランスの『ピュブリシスグループ』、アメリカの『インターパブリックグループ(IPG)』が世界の“ビッグ4”と認識されている。電通は2013年、ロンドンに本社を持つ『イージスグループ』を買収したことで、グローバルなネットワークを強化した。そのM&Aの効果もあり、『電通イージスグループ』が世界5位に食い込んだが、ビッグ4と比べると存在感は薄い。今後、大手のグローバルブランドは、広告会社グループが提供する統合されたサービスを、世界中で一貫して求める傾向が急速に強まっている。広告会社各社には益々、グローバルネットワークとしての対応力が求められることになる。また、ランキングには『アクセンチュア』や『IBM』といったコンサルティング企業傘下の広告会社が入っているが、広告のデジタル化に伴い、従来のコンサルティング会社等とのビジネスの境界線が無くなり、新たな競争が生まれていることは注目だ。この傾向は今後、日本においても顕在化していくだろう。 =おわり

               ◇

本誌編集部では毎週月曜日の朝、新米記者からデスク・編集長まで、全員が特集と単発の企画を提出し、全員で相互に評価する。その会議で7週間前、電通の企画を今号のデスクが提案したところ、半数以上から「いいね!」の声。これをやらないと、会議の意味が無くなる。やり始めて気付いた。「『電通にメディアを支配する陰の力があるのではないか?』というのは、メディア側が作り上げた虚像ではなかったか? そして、ITの普及で変質を迫られているのもメディア側ではないか?」ということだった。担当デスク以下部員は、休日返上で働いた。渾身の力作を読んで頂きたい。貴重な証言は残せたと思う。次の会議でどんな目玉企画が飛び出すか。どんな企画でも、やろうと思えばできる。編集会議で「いいね!」が沢山挙がった企画が実現できなかった時が、媒体の終わりだ。 (本誌編集長 金山隆一)


キャプチャ  2016年8月23日号掲載

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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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