【警察の実力2016】(18) “昇進”戦線に異状あり…警察改革が齎した功罪

警察も組織である以上、出世競争は避けられない。素人目には、捜査能力が高い者ほど上に上がると思いきや、然に非ず。21世紀に入って“異変”が起きている。 (取材・文/フリージャーナリスト 暮野蒼)

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事件は時代を映す鏡――。犯罪は、その時々の社会情勢を反映し、取り締まる側の警察も時代に翻弄されてきた。そして、現代。事件の現場から聞こえてくるのは、新たな時代の変化による危機感だ。「兎に角、不祥事を起こさない。捜査ミスをしない。要は、『余計なことはするな』ということ」。首都圏のベテラン現役刑事は、そう嘆息する。「嘗て、デカ(刑事)と言えば難しい事件を解決してナンボという“職人気質”があった。ホシ(犯人)を挙げることが一番の誇り。だが、今は警察もワークライフバランス。仕事だけでは評価されず、『休みを取らないとは何事だ!』となれば、面倒な事件は誰もやりたがらない」(同)。別の首都圏の大規模警察署幹部も、自嘲気味に言う。「コンプライアンス強化は時代の趨勢。高い倫理観が求められる警察は尚更で、署員の“事故防止”が至上命令。飲酒・借金・不倫…全く限が無い」。管理職は部下の“日常”まで細かく点検し、トラブルに目を光らせる。個人的な酒宴の報告を義務付けるだけでなく、時間制限まで設け、出勤した全職員にアルコール検査を課すことさえあるという。こうした警察幹部のボヤキの根っこは、2000年に始まった“警察改革”にある。当時、警察は大きな危機に直面していた。『ストーカー規制法』制定のきっかけとなった埼玉県の『桶川ストーカー殺人事件』(1999年)では、事件前に被害者の被害相談を杜撰に扱うといった不適切な対応が発覚。

また、神奈川県では警察官による薬物事件の揉み消しが明らかになる等、全国で不祥事が相次ぎ、警察に対する国民からの信頼は地に落ちていた。批判を受けて、国家公安委員会と警察庁が纏めたのが『警察改革要綱』だ。その柱は、情報公開による透明性の確保や、重大事件に繋がる恐れがある案件の適切な処理。そして、不正や不祥事を根絶する“厳正な監察の実施”だった。結果、「国民の信頼はある程度回復した筈」と別の警察幹部は評価するが、その反面、他の弊害が出ているという。「コンプライアンスや人事管理が評価の主眼になり、警察官がリスクを避け、萎縮するようになった」(同)。改革の負の側面は、個々の警察官に留まらず、“組織対立”にまで及んでいるというから深刻だ。警察には、大別して2つの部門がある。事件捜査を担う“捜査”部門と、予算・人事・監察を司る“警務”部門だ。伝統的に、これまでも両部門は内々に反目し合ってきた。「極端に言えば、捜査は警務を“捜査を知らない癖に口ばかり出す素人”と揶揄する。逆に、警務は捜査を“規律を守らずに問題ばかり起こすならず者”と見下してきた」(更に別の警察幹部)のだ。だが、改革によってコンプライアンスや人事管理が重視されたことで、両者のパワーバランスに変化が生じ始めているという。「現場経験が乏しいにも関わらず、管理業務に長け、実績を残した警務畑の人間が、捜査部門の枢要を占めるケースが増えている」(捜査関係者)。抑々、人事・会計・監察を扱う警務は、警察行政の中枢の為、昇任も早くなる傾向にある。だが、ここにきて「“叩き上げ”を飛び越えて、畑違いの捜査幹部になることで、両者の反目が強まっている。指揮能力に欠け、部下も忠誠心を示さず、オロオロする警務畑出身の捜査幹部もいる」(同)事態に発展しているという。改革と共に始まった21世紀も、はや16年目。新たな変化に向けた転換期を迎えているのかもしれない。

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■田中角栄の頼みを断わった警察と政治の微妙な関係  亀井静香氏(元警察庁警備局理事官・衆議院議員)
私は1962年に警察庁に入庁し、20代後半で埼玉県警の捜査2課長になった。兎に角、捜査員の士気を高め、当時の東京地検特捜部や警視庁捜査2課にも負けずに事件を挙げたね。でも、やり過ぎて虎の尾を踏んだこともある。ある自民党の公認候補者を逮捕しようとした時、警察庁から「逮捕せずに任意でやれ」と指示が下りてきた。当時の長官は、“カミソリ後藤田”と呼ばれた後藤田正晴さん。そして、自民党の幹事長は田中角栄さん。角さんと後藤田さんは兄弟のように仲が良かった。任意捜査は、角さんが後藤田さんに頼んだのだろう。しかし、私は辞職覚悟で逮捕に踏み切り、結果として何の咎めも無かった。角さんと後藤田さんの個人的な関係はあったのだろうが、組織としての警察は、国家公安委具会制度を設けて、政治と距離を置いている。意外に思われるかもしれないが、実は警察は愚直なぐらい政治に近付かない。角さんと後藤田さんは特別だったが、普通は警察官僚が政治に近付いたらバーンと飛ばされる。私はその後、警察庁警備局の極左事件に関する初代統括責任者となって、『成田空港事件』や『連合赤軍あさま山荘事件』等の陣頭指揮を執った。公安情報の元締めだった人間として断言するが、情報は絶対に官邸に上げない。そんなことをしたら情報が拡散するし、“政治警察”になってしまうから。いくら情報が欲しくても、内閣には警察の人事権が無い。そうやって警察は、今も政治的中立を保ち続けている。


キャプチャ  2016年7月30日号掲載

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