【Global Economy】(12) 低迷ロシア、打開できるか…経済制裁と原油安がダブルパンチ

ロシア経済が、欧米による経済制裁と原油安のダブルパンチで低迷している。打開に向けて、日本や中国との関係強化に加え、ロシアに友好的な姿勢を見せるアメリカのドナルド・トランプ次期大統領への期待も高まっている。 (本紙経済部デスク 中沢謙介)

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今月9日午前のロシア下院議会。アメリカ大統領選の結果が“速報”された。「3分前、ヒラリー・クリントン氏がアメリカ大統領選に敗れたことを認めた。そして、ほんの数秒前、トランプ氏が次期大統領として演説を始めた」。報告が終わるや否や、議場は笑顔と拍手に包まれた。トランプ氏の政権運営への不安から、日経平均株価は900円超も急落した。しかし、ロシアの主要株式指数・RTSは同日、1.8%上昇した。トランプ氏はプーチン大統領を「有能な指導者だ」と称賛し、バラク・オバマ政権で悪化した米露関係の修復を訴えている。ロシアでは、「経済制裁の解除に繋がる」との期待が広がる。「昔はフランスのワインやシャンパンも時々飲んでいたけど、物価が高くなっているので、今ではお祝いの時くらいしか飲めない」。モスクワ郊外の安売り店で今月上旬、ワインを買いに来た自動車販売店の店員・ワシリーさん(55)は、溜め息を吐いた。1本543ルーブル(914円)するフランス産ワインを諦め、買い物力ートには1本131ルーブル(220円)のロシア産白ワインを入れた。ロシアの消費者物価は昨年、平均15.5%も上昇した。実質経済成長率が3.7%のマイナス成長となり、通貨のルーブルは対ドルで37.4%も下落した。輸入品の価格が上昇し、物価が押し上げられた。人々の実質賃金は前年比9.5%低下し、個人消費は9.6%も減った。消費の落ち込みは、リーマンショックが起きた2008年以来の大きさだ。企業はリストラを加速している。現地の調査会社の調べでは、昨年、従業員を削減したロシアの企業は、家電・建設・自動車・石油等を中心に全体の39%と、前年の8%から急増した。今年も経済成長はマイナスの見通しで、従業員の給料の支払いが遅れる企業も増えているという。

2000年代、ロシアは5~10%台の高い経済成長が続いた。ブラジル・インド・中国・南アフリカと共に『BRICS』と呼ばれ、世界経済をリードしていくとみられた。しかし、今や見る影もない。苦境は、その経済構造に起因する。ロシアは、輸出の7割を資源関連が占め、国家の歳入の約4割は石油・天然ガス関連の税収だ。天然資源に大きく依存する体質は諸刃の剣だ。原油価格が上昇した2000年代の景気は好調だったが、経済の実力を高める努力が疎かになった。2014年以降に原油価格が急落すると、一転して景気は悪化した。ロシアの財政収支は、原油価格が1バレル=80ドルがを超えると歳入が増えて、黒字になるとされる。原油価格は今年2月に1バレル=20ドル台まで下落した後に持ち直し、現在は50ドル近くで推移するものの、アメリカのシェールオイルの生産拡大が上値を抑えており、80ドルには程遠い。経済制裁は、資源メジャーがロシアで資源開発を行うことを幅広く制限する。今、開発を進めないと将来の出量が増えない。制裁が長引けば、頼みの資源部門にもダメージが残る。旧ソビエト連邦時代の中央集権による計画経済から、市場経済に転換したものの、国家の関与は色濃く残り、経済の効率は今も悪い。公的機関や民間企業は、過剰な人員を抱えたままだ。中央銀行である『ロシア銀行』の従業員は6万人と、『日本銀行』(4600人)の13倍。国内最大の民間銀行である『ロシア貯蓄銀行(ズベルバンク)』の従業員は33万人と、預金規模が近い『りそなホールディングス』(1万6000人)20社分にもなる。製造業も弱い。2013年に国内企業が発売した“ロシア製”スマートフォン『YotaPhone』は、通常の画面に加え、裏面に消費電力の少ない電子ペーパーディスプレイを“世界で初めて”搭載した。「ウラジーミル・プーチン大統領が、中国の習近平国家主席にプレゼントした」とも報じられた。しかし、“ダブル画面”のニーズは乏しかった。イギリスの新聞によると、販売台数は後継機も含めて、僅か7万5000台に留まる。ロシア国内では当初、3万5000ルーブル(5万9000円)程度で売られていたのが、1万9000ルーブル(3万2000円)程度に値下がりした。『第一生命経済研究所』の西浜徹氏は、「ロシア経済は当面、勢いの乏しい状況が続くことは避けられない。資源頼みの経済を転換しなければ、高成長に回帰する姿は描けない」と指摘する。

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■アジアに視線、日本に期待
経済の再生に向け、ロシアの目は、成長が期待できるアジアに向いている。ロシア国営石油最大手の『ロスネフチ』等は先月、インドの石油精製・販売大手の『エッサールオイル』を約130億ドル(約1兆4000億円)で買収すると発表した。インド向けの原油輸出を増やす狙いだ。中国にも接近する。プーチン大統領は2014年、北京を訪れて習近平国家主席と会い、中国に資源開発への参入を開放する見返りに、中国から金融面での協力を得ることで合意した。ロシアにとって中国は今や、最大の貿易相手国だ。カザフスタンやベラルーシ等とは自由貿易圏『ユーラシア経済同盟』を創設する一方、ベトナムとこの経済同盟との間で自由貿易協定を結び、原子力発電所の建設や武器の技術供与でも関係を深めた。ウラジオストクで外国企業を招いた『東方経済フォーラム』も初開催した。安倍首相とプーチン大統領は、今週末と来月15日に予定する会談で、安倍首相が示した8項目の経済協力計画の具体化を協議する。フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏は近著『問題は英国ではない、EUなのだ』(文春新書)で、「日本のパートナーとしてふさわしいのはアメリカとロシア」だと指摘する。日本にとって、ロシアとの関係強化は、隣接する中国への牽制にもなる。現在、ロシアには社会不安の高まるウクライナから教育水準の高い移民が数多く流入しており、ロシア経済を支える存在になる可能性がある。アメリカのトランプ次期大統領は、“世界の警察官”の立場から退く考えを示す。日本政府は、北方領土交渉の呼び水にしたいロシアへの経済協力を、アメリカにあまり遠慮せずにできるようになる可能性もある。経済構造の変革を迫られるロシアにとっても、「高い技術力を持つ日本の重要性は確実に高まっている」(立正大学の蓮見雄教授)。日露首脳会談は、両国にとって極めて重要な場となる。


⦿読売新聞 2016年11月18日付掲載⦿

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