【オトナの形を語ろう】(02) 死ぬくらいならさっさと別の場所で生きろ

扨て先週、“仕事は人が生き続ける為の行動”と話したが、そう言われてもそれは理屈であり、貴方にとって、今、自分の仕事に関して起こっている問題は、例えば「今の仕事はどうしても自分には向いていない」とか、もっと大変なのは「今の仕事が嫌で嫌でたまらない」という人もいるだろう。若い人なら、「一体、どういう仕事に自分は就けばいいのかわからない」というのもあるだろう。先週も書いたが、仕事とは人間が集団で行動し初めて、其々が持たされたか、持たざるを得なかった役割・分担である。しかし、それは大昔のことで、現代人は仕事に就く前に、大半の人は自分でその仕事を選択したと言える。「いや、自分は何となく、この会社の諸条件・評判が良かったので選択したのです」「就職課の人に、大学の先輩に、友の紹介で…選択して」等と様々な理由があるが、どんな理由であっても、それを決意したのは当人なのである。今の若い人が1つ大きな勘違いをしているのは、大学なり専門学校なり、教育を受けている期間から社会に一歩入ると、その瞬間から、それまでとは全く違う立場・全く違う人間として扱われることをわかっていない点である。大学・専門学校・通信教育は、若い人を有能にさせる為の社会から隔離された場所・時間だったのである。しかし、そこから一歩出たら、その人が有能か(若しくは無能であるのか)が問われる立場なのである。それを、チンタラ過ごした大学の延長線上にあるのではと(そこまで思わなくとも近い部分で)思っている者が多いのだ。

「今の仕事が自分に向いていない」とか不得手とか考える前に、貴方がその仕事ができるか・できないかを会社・組織は見ており(新入社員講習会等やりはするが、そんなもん大して役には立たないものだ)、当人の向き・不向き等考慮はしないし、する筈がないのである。扨て、そこで「嫌で嫌で仕方がない、私はそのうち壊れてしまいます」と言う人に言っておくが、会社はそんなことに目を向ける筈もないし、社員1人ひとりの精神状態を一々心配していたら会社は前に進めないし、会社ではなくなってしまう。なら、どうしたら良いか? 私は、「嫌で嫌で仕方がないのなら、さっさとそこを辞めてしまいなさい」と提言する。身体の疲れは休養・栄養を取れば快復するが、オツムやココロ(そんなもんがあるかどうかは疑問だが)がおかしくなった場合は、人間は簡単に全てが壊れてしまう。今も、日本で1日に100人近い人間が自殺しているのは、大半がココロという厄介なものがおかしくなってしまったのが原因である。「死ぬくらいならさっさと別の場所で生きろ」。それが生きる基本である。これはいつか、諍い・争いのことを書く“喧嘩の勘”の章で詳しく書くが、喧嘩で大切なのは勝ち・負けではなく、“喧嘩を乗り切る”ことなのである。“逃げて逃げまくる”のも、喧嘩を乗り切る大事な方法の1つだ。不登校や苛め等の子供・少年・少女の問題も、教育の場が、教師が、家族が…等と言っていても何の解決にもならないのが現状なのである。たとえ子供でも、いや子供だから“逃げて逃げまくれ”が大切なのである。「死ぬくらいならさっさと別の場所で生きろ」が、大人の仕事の場でも当然、活かされるのである。

「男らしくないじゃないですか」。バカを言いなさんナ。生きていてこそ、それで初めて男・女であり、チン・マンが動くのでしょうが。体裁のいいのは、殆どがヤラレルから。話が逸れたが、別の場所というのは具体的には転職である。「そんなに簡単に転職できますかね?」。できる訳ないだろう。我慢して今の仕事に残る何十倍もの精神力と体力、そして運が必要となるのが転職だ。残っていれば死んでしまうんだから、命懸けで全精力を注ぐことである。「我慢をして、会社の為に、仲間の為に、ここを紹介してくれた人の為に…残る人はどうなるんでしょうか?」。そりゃ残る者の理が、去る者には将来、格が1つ上がったら、わかる日が何れやって来る。でも、それは残ってみて、時間が経過した後のことだから、ここでは書かないが、判断能力の欠如とは根本が違う。どんな会社を選べば良いか? それは他人の、身内の意見をよく聞き、その後で、それを全て無視して判断することだ。「よくわかりませんが…」。バカモン、そう易々とオトナの形がわかってたまるか。


伊集院静(いじゅういん・しずか) 本名は西山忠来。作家・作詞家・在日コリアン2世。1950年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業後、『電通』に入社。CMディレクター等を経て、1981年に作家デビュー。『愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない』(集英社)・『大人の男の遊び方』(双葉社)・『無頼のススメ』(新潮新書)等著書多数。


キャプチャ  2016年11月28日号掲載

スポンサーサイト

テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR