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【宇垣美里の漫画党宣言!】(13) 終わりのない生の苦しみ

最初に目を引かれたのは、その特徴的な美しい作画。すらりと手足の伸びた華奢な体軀に、色とりどりに煌めく髪。それらから仄かに香る色気に魅了されて、『宝石の国』に手を伸ばせば、広がっていたのは果てしない地獄だった。淡々と降り積もる絶望に、べったりと纏わりつく虚無。切なくて悲しくて、でも儚く美しく愛おしい。私は彼らの為にもう祈ることしかできない。遥か遠い未来、不死の体を持つ宝石たちは、彼らを装飾品にしようと月から襲来してくる月人と戦っている。彼らは医療や戦闘、服飾等、其々の特性に合わせた役職に就いているが、主人公のフォスフォフィライトは戦闘職を望むものの、体の脆さや天性の不器用さも相俟って、何の役割も与えられぬままであった。月人との戦いを望むのは、偏に自分たちを導き愛してくれる金剛先生を助けたかったから。ところが、フォスが思わぬ出来事により力を得たことで物語は動き出し、彼自身も様々な経験の中で真実に翻弄されることになる。美しく個性豊かな宝石たちは皆魅力的で、モノクロの紙面ですらその煌めきが伝わってくるようである。其々の宝石の特徴を調べながらその擬人化を楽しめるのも、この作品のポイントだ。宝石たちはどんなに割れて粉々になろうとも、直せばまた動き出す。

彼らの中に“死”の概念はない。けれど、永遠に続く生の中で、美しく楽し気な彼らも、人知れず葛藤を抱えている。あるものは自分より完璧な相方を見るのが苦しく、あるものは鏡のように似通った双子のいない世界を夢見て、周囲に毒を散らしてしまう己の体質を呪う。けれど、その苦しみは永遠に昇華されることはない。終わりがなく、永遠に諦めきれない人生とは、斯くも苦しいものなのか。いつの世も不老不死は永遠の願いのように言われているけれど、私たち人間に命の終わりがあるのは、実は救済であったのかもしれない。度重なる負傷による足りない部分の継ぎ足しと、大切な仲間を目の前で奪われる経験を重ねることで、フォスは見た目も中身もどんどん変わってゆく。ただ、自分のままならなさが歯痒くて、誰かの役に立ちたかっただけなのに。大義の為に仲間を欺き、傷付け、大好きだった先生に反旗を翻すフォス。いつしかこんな遠いところまで来てしまったけれど、彼がどうしてこんなにも変わってしまったのか、もう誰も覚えていないし、見てもいない。決断を重ねる毎に文字通りボロボロになり、独りになってゆくフォスの姿が痛々しくて胸が苦しい。敵だった筈の月人たちもまた、救いを求める悩める魂だ。そうか、正義の反対はまたもうひとつの正義でしかなかったのだと思い出した。もう戻れないし、進み続けるしかないけれど、できることは救いを懇願することだけ。そんな辛い道があっていいのだろうか? どうやったら皆が幸せになれるのか? どんなに考えても見えてこない。救いが何なのかも、最早わからない。だから私は祈る。この先、どうか彼らに安らぎが訪れますように、と。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。近著に『風をたべる』(集英社)。


キャプチャ  2019年12月5日号掲載
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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:George Clooney

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