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【水曜スペシャル】(104) 滋賀・人工呼吸器外し事件、検察の特別抗告で冤罪被害者の苦しみは続く



20191211 08
「裁判官たちには散々裏切られましたが、やっと無実だとわかってもらえ、嬉しいです」――。2017年12月20日、大阪高裁で行なわれていた第2次再審請求の即時抗告審で、後藤眞理子裁判長から再審開始決定を受けた時、西山美香さん(38、右画像)は喜びを率直に口にした。本誌が休刊中、過去に本誌で紹介した幾つかの冤罪事件で、再審開始等の嬉しい出来事があった。西山さんの人工呼吸器外し事件もその1つだ。今から約13年半前に殺人の容疑で逮捕されて以来、冤罪の呪縛に囚われてきた西山さんは、漸く呪縛から解放されたのだ。ところが、歓喜の5日後、事態は暗転した。大阪高検が最高裁に特別抗告し、再審開始の可否が最高裁で再び審理されることになったのだ。西山さんはこう振り返る。「その日はクリスマスだったので、色々買い物をしていたのですが、マスコミの人から電話があり、検察が特別抗告したと聞かされたのです。『検察はどうせ特別抗告する』と思っていましたが、実際にされた時はやはり呆れましたね」。冤罪事件で再審開始の決定が出ると、検察が即時抗告や特別抗告をして再審を先延ばしにし、冤罪被害者やその関係者を激怒させるのは毎度のことだ。ここに至るまでに、事件がどんな経過を辿ったのかを、改めて振り返ってみよう。事件の舞台は、滋賀県愛知郡(※現在の東近江市)の『湖東記合病院』である。2003年5月22日早朝、寝たきりだった男性入院患者のAさん(※当時72)が急死。滋賀県警は事件性を疑って捜査した。そして、当直だった女性看護師と看護助手の西山さんの2人が、Aさんの異常を見逃す等の過失があった疑いをかけられたのだ。

そして、翌2004年7月22日、当時24歳の西山さんが任意の取り調べで“犯行”を自白し、殺人の容疑で逮捕された。「人工呼吸器のチューブを外し、Aさんを殺害しました。看護助手の待遇が不満で、病院を困らせようと思ったのです」。当時、この西山さんの自白は大きく報道され、身勝手な殺人事件として世間に印象付けられた。しかし、ほどなく大津地裁で始まった裁判では、西山さんは自白を撤回し、無実を主張。そして公判では、有罪証拠は自白だけで、その自白も内容が激しく変遷していることが明らかに。検察官は、西山さんが看護助手の待遇に不満を持っていたと示す証拠すら提示できなかった。それにも拘わらず、西山さんは一審、二審、上告審共に無実の訴えを退けられ、懲役12年の刑が確定。2010年9月には、自白が虚偽だとする心理学者の意見書等を新証拠に大津地裁に再審請求したが、これも実らない。2012年9月に行なった第2次再審請求では、弁護側はAさんが自然死した可能性を示す医師の意見書を新証拠として示したが、やはり再審の扉は開かれなかった。西山さんは結局、2017年8月に満期出所するまで、和歌山刑務所で服役生活を強いられた。そんな経緯を経て今回、第2次再審請求の即時抗告審で再審開始決定が出た最大の要因は、Aさんの死因に関する再鑑定だった。弁護側が3人の医師(※循環器科医師・法医学者・腎臓病理学の専門医)に 死因の再鑑定を依頼したところ、全員が「Aさんの死因は致死性不整脈である可能性が極めて高い」と結論したのだ。致死性不整脈とは、放置しておくと突然死に至る危険な不整脈だ。後藤裁判長は決定書で、この鑑定結果を元に、「Aさんの死因が致死性不整脈である可能性は、無視できる程に低い程度ではない」と指摘。西山さんの自白についても、内容が目まぐるしく変遷していることから、「体験に基づく供述ではないとの疑いが生じざるを得ない」と判断した。こうした確たる根拠に基づき、再審開始の決定がなされたのだ。にも拘わらず、大阪高検は軽々しく特別抗告し、再審を先延ばしにした。そして現在、新たに自分たちの有罪主張に沿う法医学者の意見書を最高裁に提出しようとしているという。「弁護団の先生方には『大丈夫ですよ』と言われていますが、やはり心配ですね」(西山さん)。証拠的に再審開始決定が覆る可能性は低いとしても、当事者が心配になるのは当然だ。検察の再審先延ばしは理不尽極まりない。

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ところで、再審開始決定が出て以降、西山さんが取り調べ担当の山本誠刑事に好意を持っていた為、虚偽の自白をしたことがしばしば報道されてきた。その為、インターネット上では、西山さんは本人の落ち度もあり、冤罪被害に遭ったように揶揄する人たちが現れた。しかし実際には、山本刑事の取り調べは西山さんの好意につけこみ、時に脅かし、時には甘い言葉を使って言いくるめる不当なものだった。西山さんはこう振り返る。「私が否認すると、山本刑事は『逃げるな』ときつい口調で迫ってきて、突き飛ばされたりしました。一方で、『殺人でも死刑から無罪まである』等と優しい言葉もかけられ、否認できなくなったのです」。第2次再審請求後、実は西山さんには軽度の知的障害や発達障害があることが判明している。そんな西山さんにつけ込み、冤罪に貶めた山本刑事の罪は重い。西山さんの雪冤の為に頑張ってきた父の輝男さん(76)は先日、痛みがあった股関節を手術し、1ヵ月も入院する等、現在は体調が優れない。それでも、「娘は有罪のままなので、就職もできません」と、今も一番に娘のことを心配している。脳梗塞の為にリハビリ中の母の令子さん(68)も同様だ。冤罪被害者本人のみならず、高齢の両親まで苦しめ続ける検察の特別抗告は、卑劣だと言う他ない。そんな中、西山さんは支援者たちと一緒に、街頭で再審開始を求める署名活動をしたり、最高裁に赴いて特別抗告棄却を要請したりと、雪冤の為に懸命に頑張り続けている。「無罪が取れたら、西国三十三ヶ所巡りに行きたいです」という西山さんの希望が、一日も早く叶ってほしい。 (取材・文/ルポライター 片岡健)


キャプチャ  第29号掲載
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