【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(23) イエメン国境で目撃したAK47と密入国者の実態

「神は偉大なり、アメリカに死を、イスラエルに死を、ユダヤ教に呪いを、イスラムに勝利を」――。イエメンで活動するイスラム教シーア派の過激組織『フーシ』が掲げるスローガンである。筆者は、この言葉をアラビア語で暗誦することができる。原油を求めてクアラルンプールからランカウイ島まで来た筆者が、次に目指す国はイエメンだった。オマーン経由となったのは、イエメンに直接入国することが困難だった為だ。オマーンの首都・マスカットを経由して10時間、到着したサラーラ国際空港は、茶色い大地に浮かぶアスファルトの要塞に見えた。乾いた土の匂いと、焼けるような日差しに一瞬たじろぐ。ここからイエメンの国境までは80マイル。車を飛ばせば2時間で着くだろう。通訳兼ガイドのハサン、そしてドライバー兼ボディーガードの大男・ノブユキ(ニックネームかと思ったら、“幸運に恵まれる”というアラビア語だった。中東にはよくある名前らしい)に迎えられた筆者は、ランドクルーザーに乗り込むと、エスコート代金の2万ドルを渡した。どこの国でもドルは通用する。アメリカが強いのは、ドルがあれば石油を買うことができるからだ。そのドルの信頼性を担保しているのが軍事力であり、強いアメリカを実現している。2万ドルを渡したことで、ここまでに要した費用は既に10万ドルを超えていた。カネ払いの良さと行動力は、暴力団のアドバンテージである。この勢いこそが、一般企業に対抗できる武器なのだ。

2011年3月11日に発生した東日本大震災。マレーシアやインドネシアへ建築用合板を買い付ける為、震災の翌日には海を渡っていたのも暴力団だった。暴力団はカネの匂いに敏感で、動きも早い。一般企業が決裁に手間取っている間に、絶えず先回りをする。だから筆者も、こうして中東の見知らぬ国へ来ているのだ。ランドクルーザーは土埃を巻き上げながら、茶色い世界を疾走する。ドライバーのノブユキは黙って運転しているが、ハサンは煩わしいほど饒舌だった。疲れていたので適当にあしらっていると、一方的に話し出した。今から会いに行く人物は、シーア派の過激組織『フーシ』と対立する部族の長だということ。また、その活動資金として、サウジアラビアから原油のアロケーション(販売権)を与えられていること。サウジアラビアにとって、シーア派の過激組織は脅威なのだろう。その為に、対抗する組織へ原油を販売する権利(=アロケーション)を与え、支援している訳だ。ハサンの説明で、イエメンの社会構造や情勢がかなり把握できた。国境までは3時間以上かかった。簡素なゲートと小さな建物の国境検問所から、肩に自動小銃『AK47』をかけた兵士2人が出てきた。これまで危険な世界で生きてきたつもりだった筆者も、嘗てない恐怖を感じた。この場所で、信じられない光景を目にすることになった。銃を持った兵士に挟まれるようにして建物へ入ると、目に飛び込んできたのは、大きな檻に入れられた10人ほどの黒人だった。よく見ると、互いの首と足を其々鎖で繋がれている。彼らは、オマーンを目指すソマリアからの密入国者であった。その処遇は冷徹極まりないものだったのだ。「コイツら、数が纏まったら北部の砂漠へ捨てに行くんだ」。ハサンは、まるでゴミでも捨てるかのような口振りで、黒人たちの末路を教えてくれた。「アルカイダへ何をしに行く?」。兵士の英語は下手だったが、はっきりと間き取れた、“アルカイダ”と。膝が震えそうになるのを、筆者は必死で堪えた。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2016年11月22日号掲載
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