【男の子育て日記】(28) ○月×日

子供が生まれてからというもの、ほぼ毎日と言っていいぐらい考えるようになったこと。外食問題。これ、子供がいる人は首が折れそうなほど頷いてくれると思う。知らなかったなぁ、“子供入店禁止”のお店が意外と多いんだ。家の近所に“人生べストワン”と断言できるほど美味しいおでん屋さんがあるんだけど、そこは小さい子を連れてきてはいけない。お洒落や高級を売りにしている訳でもないのに、何故かそういうことになっている。喫煙も全席OKだけど、こちらは「まぁいいか」と思っていた。なーのに。ある時、妻が「赤ん坊が一緒ですけどいいですか?」と念の為に電話したところ、膠も無かった。あんなに好きなお店だった筈が、「もう絶対に行かない」と悔し涙を流していたっけ。だから、僕も随分前に、季節は冬で、妻が東京にテレビで前日入りした夜のこと、一文が未だ小さかったので、抱っこ紐に入れてコートを着て、そのおでん屋にこっそりと連れて行った。滞在時間は20分程度か。ビールを飲み、好きなおつまみを3品ぐらい食べて、早々に出てきた。コートは店内でも着込んだまま。一文もずっと寝ていたので、お店の人に気付かれることはなかった。完全犯罪を成し遂げたようで気持ちよかったな。以後も妻に、「家で俺が一文を見ているから、久し振りに1人で食べてきなよ」と勧めたが、根に持っているようで、彼女は未だに足を運んでいない。

そのお店に限った話ではない。妻と一文と東京を訪れた際、目星を付けた店を改めてインターネットでチェックすると、「えっ、あんな気さくな大衆店でも5歳以下は入店お断りなんだ」と驚くことも珍しくない。これを読んでいる人は「愚痴か」と思うかもしれない。でもねぇ、こういう不便も楽しいよ、正直。以前は2人でふらっとどこにでも行けたけど、今は「一文はどうする?」が大前提。オムツとミルクは必須。「抱っこ紐? 乳母車?」「あの距離だからね。自転車に乗せようか」。そうなんですよ、電動自転車を買ったんです。折半の筈が、何故か僕が全額出しました。十数万円。「“ネプリーグ”(フジテレビ系)でチーム優勝して、出演料とは別に20万円入ったんじゃなかったの?」と訴えたものの、抗議は受け入れられなかった。論戦しても弁護士には勝てない。僕も妻も、最初のうちはペダルの踏み込みが思ったより動きがあるので戸惑ったが、直ぐに慣れた。これまで、保育園まで抱っこしながら徒歩で20分かかったけど、今では10分で着くようになった。毎朝夕の送り迎えが楽になり、行動範囲も広がった。一文は外に出ると、始めは大人しくしているが、慣れるとギャーギャー騒ぐ。これも成長と諦めるしかない。折角、赤ん坊OKのお店を見つけても、「落ち着いて食べるのが難しい」という訳で、最近は妻が手料理を披露してくれることが増えた。腕も確実に上がった。不自由から楽しいことが増えていく。君のおかげだよ、ありがとう、かずちゃん。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2016年11月24日号掲載
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