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【村西とおるの「全裸で出直せ!」】(35) 絶望を口にする資格は俺にはないんだから

三十数年程前のことです。フィリピンのマニラ近郊にある旧モンテンルパ刑務所に収容されていた日本人死刑囚に会いに行ったことがありました。アメリカで懲役370年を求刑されて裁判を行ない、司法取引で2800万円の罰金を払うことで無事帰国できました。日本に戻り、暫くしてフィリピンに行った折に、その刑務所に日本人の死刑囚がいることを知ったのです。死刑囚といっても、その頃のフィリピンでは執行は禁止されていましたので、判決が出たからといって即座に刑を執行されるという状況ではありませんでした。が、異国の空で4度死んで、漸く故国の土を踏めるような370年という懲役を求刑された身では、とても他人事には思われなかったのです。現地の事情通の日本人の話では、容疑は“拳銃の密輸”ということでした。人を殺したわけでもないのに死刑とは、何とも気の毒に思われました。一度、その日本人の死刑囚に会って事情を聞き、同朋として力になれるものならと考え、面会に行くことにしたのです。旧モンテンルパ刑務所は、かの山下奉文大将も収容されていた場所でもあります。近くには日本人のB級・C級戦犯が死刑を執行された刑場の跡が残っていました。そこには記念碑が建てられてあり、誰が供えたのか、少し枯れてはいましたが、可憐な花束が添えられてありました。

戦後40年も経った今も、こうして英霊を偲ぶ人たちがいることに、深い感銘を覚えたのです。ハワイで保釈先の天台宗ハワイ別院のお寺に寄贈された本の中に、『モンテンルパの灯は消えて』という一冊がありました。終戦後、戦犯となってモンテンルパの刑務所に収容されていた旧日本兵の皆様の日常を記した本でした。殆どがいわれなき罪で濡れ衣を着せられた戦犯の皆様でしたが、中でも涙を誘ったのは、そうした無実の旧日本兵の人々が死刑の宣告を受け、刑場に露と消えていくシーンです。遥か故国日本の方向を仰ぎ見て、「お母さん!」と叫んで散っていく最後の場面を読み、慟哭しました。自分も遠くハワイで囚われ人となっている身では、無実の罪で異国の地で命を奪われていった方々が我が事に思えて、その無念さはどんなだっただろうと考えると、何ともやりきれない思いがしたのです。そうしたことがあって、できることならば力になりたいと、日本人死刑囚に面会に行ったのです。白い高い壁がそそり立つ大きな刑務所でした。中には約2000名のフィリピン中から集められた悪党諸氏が収容されていました。面会の許可は簡単に下りました。それも、本人が収容されている獄舎まで歩いて行っていいというのです。軈て、そこでは日常的に殺人が行なわれている危険な場所であることを知るのでした。


村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。


キャプチャ  2020年1月16日号掲載
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