和歌山アパート立てこもり事件、犯人は如何にしてマニアも驚く実銃を手に入れたのか

先月末、元同僚の4人を死傷させた上に逃走し、アパートに立てこもった犯人は、シャブを打ちながら18時間後に自らの腹部を撃ち抜き、自殺した。犯人が手にしていたレアな拳銃に、日本中のマニアたちは刮目した。「この男、どうやってこの銃を入手したのか?」と――。  (取材・文/フリーライター 市力)

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先月29日、和歌山市で拳銃を所持した立てこもり事件が発生したことは、記憶に新しい。警察の説得も空しく、犯人は自らの腹部を所持していた拳銃で撃ち、自殺を図った。これを受け、各メディアでは和歌山県警の捜査の杜撰さや、その在り方に対して盛んに批判報道を繰り返した。だが、その警察捜査の件は他誌で書き尽くされたであろうし、筆者としても今更、そんなことに興味も無い。今回は、テレビカメラに何度も映っていた、犯人が所持していたあの拳銃――それに焦点を当ててみたい。先ず、犯人が右手に持っていた銃、これは『コルトガバメントマークⅣ』(45口径、7+1発充填可能)である。これはアメリカ製の軍用自動式拳銃で、オートマチックの代名詞的存在だ。第1次世界大戦からべトナム戦争までアメリカ軍の制式拳銃として用いられ、最もポピュラーなハンドガンと言える。この拳銃は過去に大きなモデルチェンジを2度しており、1970~1983年までの『シリーズ70』と、1983年からの『シリーズ80』とがある。今回のガバメントは恐らく、シリーズ70のメッキフィニッシュ(ニッケルメッキ仕上げ)であると推測される。そして左手に持っていた銃、これはかなりレアな拳銃だ。これはオーストリア製の『ステアー(シュタイアー)GB』(9mm口径、18+1発充填可能)だ。

オーストリア軍は1970年代、『ルパン三世』で有名な『ワルサーP38』が老朽化したことに伴い、『ステアーダイムラーブッハ』(現在の『ステアマンリッヒャー』)に開発を依頼し、1981年に『GB(Gas Bremse)』が完成した。しかし、1983年の軍用ピストル選定で『グロック17』に競り負けると、1988年に製造中止となったことから、“幻の銃”と言われている。ガバメントも然ることながら、このステアーGBを所持している点だけをとっても、件の犯人はかなりのガンマニアと言える。そして、「この銃は日本国内で出回っている」という情報を先ず耳にしたことがない。銃に詳しいヤクザでも、国内で拳銃を入手しようとした際、「ステアーGBを」とは考えないであろうし、況してや素人ならば、その発想にすら至らないほどマニアックな銃だ。例えばコルトガバメントは、これまで数々のアクション映画やテレビドラマに登場したが、ステアーGBは1990年に公開された『The Rookie』(邦題は『ルーキー』・ワーナーブラザース)の劇中で、主演のクリント・イーストウッドの相棒でチャーリー・シーン演じるアッカーマンが愛用していた、この唯1度のみだ。先述の通り、コルトや更にステアー等は、日本国内で手にするのは先ず難しい。そして、犯人は金持ちのボンボンだったらしいが、これらの点から犯人は、「アメリカ、乃至はヨーロッパに足を運んで、自ら銃を選定して買い付けをし、何らかの方法で密輸入した」とする線が最も妥当であると考えられる。その根拠は、他にも4点ある。先ず、あの立てこもり映像を見るに、犯人は銃を持った両手の人差し指をトリガーに掛けず、伸ばした状態で、銃のフレームに付けた状態を保っていた。これは、銃の取り扱いに関する国際的なルールであり、銃に疎い日本人には知られておらず、日本ではアクション映画ですらディテールされないことが多い。次に、犯人は両手に銃を持つ、所謂“2丁拳銃スタイル”であったが、これは戦闘スタイルとしては良くない。2丁持ちの場合、1丁の弾が切れてから次に持ち変えるのが常識とされ、その点は頂けないところだ。しかし、彼は右手にコルト、左手にステアーを握っていた。恐らく右利きと思われるが、この場合、利き手に重く、反動も激しいコルトを持てば、弾数が少ない時も力が入り、標準も付け易い。そして、非利き手でも軽く、反動も緩やかで、尚且つ弾数が倍以上のステアーを握るのは、とても理に適っている。

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そしてもう1点は、犯人は自身の建築事務所で、4人に対して4発発砲して、1人を殺害、3人に重傷を負わせている。ということは、発射した全ての弾を相手の身体に撃ち込んでいるということだ。これは非常に難しく、かなりの練習を積まなければなし得るものではない。最後の点は、「犯人が逃走途中にパトカーに向かって4発を発砲した」とあるが、ここまでの流れを考えると当然、オートマチック銃を使用した筈である。だが実は、発砲現場からその薬莢が未だに見つかっていない。オートマチック銃を発射して、薬莢が出ないことはあり得ない。ということは、その際に犯人が使用した銃は『リボルバー(回転弾倉式銃)』である可能性が高い。要するに、3丁持っていたということだ。現に、犯人が建築事務所で人を撃って出てきた際に、黒い銃を落として慌てて拾っている映像が防犯カメラに捉えられているが、あれはどう見てもステアーではない。はっきりしない映像なので何とも言えないが、やはり筆者には形状が違うように思えてならない。それこそ、この銃は“幻の銃”ということだろうか…。何れにしても、あの犯人がかなりの銃マニアであったことは間違いない。自ら外国に赴き、銃を選び、買い付けて、射撃の練習を積んでいたのだろう。彼のような人物が覚醒剤を乱用し、血走った目と脳味噌で2丁拳銃を構えていたのだ。一般人が銃を所持できないこの国で、あのようにいとも簡単に3丁もの拳銃をいつでも使用できる状態で所持するシャブ中が存在するのだから、日本の安全神話など最早“過去の遺物”なのであろう――。

■日本の警察官はどんな銃を使っているのか?
各都道府県警の考察によって異なるが、殆どの警察が『SIG P232』。だが、大阪府警の装備は『M3914』であり、『SIG P232』よりも遥かに威力が強い。それだけでも、東京と大阪においての武備に関する考えの違いが伺える。しかし、日本の警察には例えば、「6発装填式の銃に5発しか入れない」というような悪習もある。小型で持ち易く、反動が少ないこの銃は、戦前から戦中にかけてのヨーロッパでは主流であったが、アメリカでは、口径が小さくて殺傷能力に劣る32口径は“しょんべん銃”とバカにされ、あまり用いられない。アメリカ輸出用の『SIG P232』は38口径に改造されているが、通常の38口径より火薬量が少ない。32口径の凡そ1.5~2倍弱に抑えられている。


キャプチャ  2016年11月号掲載

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