【Test drive impression】(03) 『BMW 218d グランツアラー ラグジュアリー』――BMWの7人乗りディーゼルミニバンの実力は?

「BMWが初めて、前輪駆動のクルマを発売する」――。その噂は、クルマ好きの間では長らく大きな話題だった。事の始まりは2009年。誕生前の2シリーズは“ゼロシリーズ”なんて呼ばれていた。というのも、BMWの最小モデルが“1シリーズ”で、更にエントリーを担うと目されていたからだ。BMWは“駆け抜ける喜び”を眼目に、「後輪でクルマを走らせて、前輪には操舵だけを任せることで、スポーティーなフィーリングを大切にする」というイメージが強かっただけに、前輪駆動のコンパクトカーを造ることに怪訝な顔をするファンも少なくなかった。しかし、だ。5年の歳月を経て、2014年に登場したブランニューモデルは、“2シリーズ”の名を冠して登場した。当然ながら、保守的なファンの間では「BMWに前輪駆動のクルマを造ってほしくない!」と思う願望が頂点に達し、蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。ここで再び、しかし、だ。旧来のクルマ好きが何と言おうと、今を生きる人間にとって、こんなにピッタリのクルマは無い。結論を急ぐようだが、アップライトに座って見晴らしがよく、室内も広々。大勢が快適に移動でき、且つBMWっぽいスポーティーな走りにも対応する。そりゃあ、昔ながらの濃~いクルマ好きにとっては、後輪駆動というアイコンが失われて、スペース重視のボディーを与えられたことで、「BMWらしさが薄まった」と感じるかもしれないが、「だから何なの?」である。寧ろ、このクルマを魅力的と言わずして何と言おう。

では何故、今までBMWはこのセグメントを発売しなかったのか? その質問はそのまま、「BMWは何故、急に前輪駆動のクルマを上手に造れたか?」という疑問にも繋がる。タネを明かせば簡単で、BMWグループの傘下には『ミニ』という前輪駆動のコンパクトカーが存在する。抑々、オリジナルのミニからして、前輪を駆動することで小さな空間に大人4人が乗れて、荷物まで積めるミニマルな空間が売りだった。その考えを現代的に蘇らせたのが新型ミニであり、2001年にBMWグループ傘下となって以降、既に約15年も前輪駆動のクルマを造ってきた実績がある。だからこそ、ライバルたる『メルセデスベンツ』が初代Aクラスから苦悩を重ねて、漸く身に付けた前輪駆動のコンパクトカーのノウハウを、BMWは2シリーズを出した瞬間から我がものにできたという訳だ。その“2シリーズ”に昨年5月、クリーンディーゼルを積んだモデル『218d』が登場した。北米で起きた『フォルクスワーゲン(VW)』のディーゼル問題に端を発して、何かとネガティブな話題が多いが、『218d』に搭載される2リットル直4ディーゼルユニットには、違法なデバイスは積まれていないことがわかっている。既に日本でのBMWの販売の内、約30%がクリーンディーゼル搭載モデルだ。実際に走らせてみると、支持される理由がよくわかる。冒頭で触れた通り、室内空間が広々している。5人乗りの『アクティブツアラー』は全高を1550㎜に抑え、日本の立体駐車場に入るサイズに調整されている。今回、試乗したミニバンの『グランツアラー』は、4565×1800×1645㎜のコンパクトなサイズであるにも関わらず、2-3-2人乗りの3列シートを備えて、日本人好みの多彩なアレンジができる。2列目シートは3分割できて、前後に130㎜スライドできる。バックレストの傾斜を変更できるから、大人が長時間座っても疲れ知らずだ。

更に、レバー1つでバックレストを倒せて、50:50に分割できる3列目シートに簡単にアクセスできる。3列目を収納すると、スクエアで使い易そうな560リットルもの荷室が生まれて、2列目まで倒せば1820リットルもの大容量となる。アウトドアに出かけたり、友人と乗り合う機会が多い若い世代にもピッタリである。使い勝手だけなら国産のミニバンに一日の長があるが、何しろ、長距離を走ってみると、BMWの真骨頂である走りの魅力がキラリと輝く。アクセルペダルに乗せた右足を踏み込むと、150馬力を生む2リットル直4ターボ付きディーゼルユニットが330Nmもの大トルクを発揮して、グイグイとクルマを引っ張ってくれる。組み合わされる8速ATの躾も良く、欲しい時に欲しいだけのパワーをデリバリーしてくれる。それでいて、燃費は21.3㎞/リットルと、このクラスの輸入車ではトップクラス。街中では滑らかに、高速道路や山道ではパワフルに、自在にクルマを操れる。旧来のファンが何と言おうが、多くの人間が望むクルマの使い勝手を押さえ、BMWらしい走りの魅力も提供してくれるのだから、人気の理由もわかる。その証拠に、発売と同時に世界中で“2シリーズ”は注目を浴び、本国のドイツでは、“プレミアムコンパクト”で不動の地位を築いていた『メルセデスベンツ』の『Bクラス』にあっという間に追いつけ追い越せで、新興国でも人気は鰻上りだ。となると、俄然気になるのが価格だ。「輸入車って400万円オーバーからでしょ?」との予想に反して、エントリーモデルの『218iグランツアラー』は381万円から用意されている。「家族が多いから」「使い勝手を重視するから」「手が届かない価格だから」という理由で輸入車を諦めていた人にとって、これほど朗報なクルマはない。


川端由美(かわばた・ゆみ) 自動車評論家・環境ジャーナリスト・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1971年、栃木県生まれ。群馬大学大学院工学専攻修士課程修了後、1995年に『住友電工』に入社。1997年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集と記者を担当。2004年からフリーに。


キャプチャ  2016年12月5日号掲載

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