【オトナの形を語ろう】(03) 男に“男振り”があるように、女にも“女振り”がある

女がいなくて淋しい。それどころか、全く女と接点が無い今日までだった。女たちが、自分の傍に寄ろうともしない。いや、目を向けてもくれない――。そういう人が、現代人には意外と多いと聞く。そうして孤独な人生を送っているらしい。バカを言いなさんナ。この狭い日本という国だけでも、女のほうが男より多いんだろ。しかも犇き合って生きているんだから、女と接点が無い訳がないだろう。先ずは基本の話から始めよう。男と女、男と男、女と女でも構わないが、人間は生きていく上で、誰かと寄り添って生きているからにはそういうものである。西洋の昔の発想では、「男と女は元々、1つの身体で、それを無理に引き離したから男と女の性器に凹凸があるので、元の身体になろうとして合体しようとする」というバカみたいな説話があるが、 男女に限らず、人間に寄り添うと安堵を得る生き物であるのは確かである。一番いい例が家族である。人間はそういう特性を持っているのだから、男も女も、視界に他人が入って来たら、その対象に必ず興味を抱くものなのである。どんなに美しい女でも、どこの令嬢であろうと、彼女たちは男に興味を抱くようにできている。だから、どんな男であれ、女たちが目も向けないというのは、その人の考え違いか不注意に過ぎない。「いや、接点が無いんです」。バカモン。接点は向こうから来るものでもないし、自分が踏み出して初めて生まれるものが接点に決まっているだろう。女も男も、接点を作ってくれるのを待っている生き物だ。

ところが、人間が社会を拵えて、どういう訳か、あらゆる宗教の経典にも、道徳の書にも、ギリシャから始まった演劇の戯曲にも、詩にも文学にも、舞踏にも、音楽にも、男より女のほうが慎ましい存在としてのポジションが築き上げられているのだ。数千年の間、そうだったものが、現代だからと言って急に大転換をする筈もない。つまり、大半の男と女は、男から寄って行く・踏み出すようにできている。指を銜えて待っていても、向こうからやって来ないように世間ができておるのだ。それが人間の習性なら、その習性に乗っかって行動すべきだろう。事ある毎に男が女に寄って行ったり、打ち明けたりするのは、人類の習性なのだから、何一つ恥ずべき行為ではないということだ。そこで相手が「何であんたみたいな男が私に告白なんてできるのよ」とほざいたら、堂々と言ってやりなさい。「俺が人類だからよ」。そんなことをほざく女は、最低の女なのだから。「色情狂と思われませんかね?」。男は全員、色情狂でしょう。女は更に色情狂ですから。少し極端だが、それくらい雄大な気持ちで踏み出さねば、「淋しい」「寒い」等と言いながら暮らさなきゃいけなくなるということである。世間をよくよく見ると、「どうしてあんなイイ女にあんな男が…」という例が幾つもある。イイ女には意外と男が告白を躊躇うこともあるかもしれないが、ひとつは、「“あんな男”と言われる男がきちんと踏み出したことのほうが、そのカップルを成立させている理由だ」と私は思っている。そうして、その女も応えた。それはつまり、その女が本物だったということでもある。“女振り”が良い女であったということだ。

「“女振り”ですか?」。そう、“女振り”である。男に“男振り”があるように、女にも“女振り”があるのだ。女が、その“女振り”を高めるのには様々な要因があるが、一番の要因は「女が男の真価を量る基準をどう持っているか?」である。「カネ・家柄・見て呉れで人を、男を判断するものではない」とわかっているかどうかである。「そんな女はいませんよ」。いないかどうかは踏み出して言いなさい。一度や二度、無下にされたくらいで諦めては駄目だ。何度も命懸けでぶつかれば、必ずそういう女と巡り逢うのが世間というものだ。“女振り”があるのだから、当然、“男振り”もある。こちらは“女振り”よりも更に厳しいものが、獲得までに色々ある。先ずは強靭な精神力と、何度失敗(女への告白ではありませんぞ)しても平然とやり直し、挑み続ける体力を養っておかなくてはならない。次に、これが肝心なのだが、他人より如何に苦節・苦境に耐える状況と時間を費やしてきたかである。その苦しみの大きさと時間が、“男振り”を作り出すのだ。“男振り”が上がったオトナの形を、女が放っておく筈がない。


伊集院静(いじゅういん・しずか) 本名は西山忠来。作家・作詞家・在日コリアン2世。1950年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業後、『電通』に入社。CMディレクター等を経て、1981年に作家デビュー。『愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない』(集英社)・『大人の男の遊び方』(双葉社)・『無頼のススメ』(新潮新書)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月5日号掲載

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