【トランプショック】(10) 期待先行、市場に陶酔感――ラリー・フィンク氏(資産運用会社『ブラックロック』会長)

20161130 07
――アメリカや日本の株式市場は、新政権を歓迎しているようにみえます。
「法人税の大幅な引き下げ・数兆ドルに上るインフラ投資・金融やエネルギー分野でのこれまでの規制の撤廃…。新大統領が掲げるこれらの成長促進策が好感されているのだろうが、株式市場には陶酔感が漂っている」
「低インフレからインフレへと舞台が変わり、アメリカ経済の成長も加速する。そんな局面転換を期待する雰囲気はある。ただ、私自身はやや慎重だ。株式市場は浮かれ過ぎている気がしないでもない」

――どんな点で?
「新政権の対外政策が未だ読めない。例えば、環太平洋経済連携協定(TPP)に反対し、北米自由貿易協定(NAFTA)を批判している。中国を為替操作国に指定する考えを示している。それらの策を実施した際の波紋が見極め難い」

――アメリカの交渉力を高めるのが狙いなのでは?
「一連の策は、アメリカへの撥ね返りが見逃せない。中国に対する為替操作国の指定を例に取ろう。中国は、アメリカ国債全体の12~15%を持つ最大の保有国だ。アメリカ国債の買いから売りに転じた場合には、アメリカの長期金利の急騰を招く」

――金利の上昇幅は?
「わからない。ただ、金利が急騰すれば、アメリカ株への影響は避けられないだろう」

――ドル相場が独歩高になっています。
「ドル高の背景には、新政権の成長促進策への期待感に加えて、財政赤字の拡大を織り込んだアメリカの長期金利の上昇がある。ドル高が進むと、アメリカ企業の輸出競争力を低下させてしまう。トランプ次期大統領は競争力の強化を掲げているが、実際には、ドルの過大評価がアメリカの対外収支を悪化させかねない」

――新興国からアメリカへ資金が流出しています。
「新興国については、通貨安の結果、輸出競争力が高まるので、先行きを心配していない。南米ではアルゼンチンに注目している。インドのような改革志向の安定した政権の国は、高成長を達成している。私は、中国に中長期的な視野で楽観的だ。外需から内需への転換は間違っていない」

――連邦準備理事会(FRB)は、新政権との間合いが難しいですね。
「FRBが徐々に金利を引き上げるのは理に適う。気をつけるべきなのは、ドル高に伴うアメリカ景気の下押し効果だ。この影響が大きいと、利上げ実施に慎重となろう」

――減税で投資や消費が増えれば、外需不振を内需で補えるのでは?
「アメリカ企業が投資を控える場合、需要を見い出しかねている為で、税金の重さが主たる要因ではない。アメリカの家計は元々、消費性向が高い。退職後の生活設計を考えると、減税分は貯蓄に回るのではないか」

――それなら、アメリカ経済の成長力を高めるには何が必要なのでしょうか?
「『人間が営んでいた仕事が、テクノロジーや機械に置き換えられてしまう』といった不安感が人々を覆っている。変化が加速する時代に重要な役割を果たす教育に、力を入れる必要がある。社会のインフラへの投資の強化も重要だ。アメリカ国民の願いを実現する強い新大統領を期待したい」

――日本については?
「人口減少に対しては、子育て等、家計を支援する政策が大切だ。生産性を向上させる為に、日本が強みを持つ先端技術をもっと積極的に活用すべきだろう。社会に安定感を与える長期雇用を維持しつつも、雇用の流動性を高めるようにするのが望ましい」 (聞き手/編集委員 滝田洋一)


⦿日本経済新聞 2016年11月26日付掲載⦿
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