【内向く世界】(01) 岐路に立つ資本主義…成長・分配、バランス再建

自由な競争や貿易で繁栄を目指すグローバル経済が試練を迎えている。広がる不平等や移民の脅威に民衆は反発し、変化を求めて投票に動く。各国が内向きになり、資本主義と民主主義の歩調が乱れる中、経済の羅針盤も改良が求められる。

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「政治のアマチュアが世界を征服しようとしている」――。イタリアの新興政党で、『ヨーロッパ連合(EU)』懐疑派の『五つ星運動』を率いるベッペ・グリッロ氏は、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領の選出を持ち上げた。イタリアは来月4日に、上院の力を弱めて意思決定を迅速にする憲法改正への賛否を国民投票で問い、マッテオ・レンツィ首相の進退がかかる。プロの政治に対抗する改憲反対派は、「アメリカに続け」と勢い付く。フランスの批評家であるツヴェタン・トドロフ氏は、「(大衆迎合の)ポピュリストは議決権を持つ議会をわが家と心得ている」と、著書『民主主義の内なる敵』(みすず書房)で指摘する。不安を煽る言説が有権者の心を掴み、既存勢力を脅かす。民主主義が資本主義に変革を迫る。「ネオリベラリズム(新自由主義)は行き過ぎか?」。『国際通貨基金(IMF)』は今年6月、発行する雑誌にこんな記事を載せた。「資本自由化や財政健全化で成長を促す路線が、逆に不平等を広げ、成長機会も奪っているのではないか」。IMFの自省が、潮流の変化を象徴する。

ロナルド・レーガン元大統領以来の自由競争経済の歪みが、8年前の金融危機に続く低成長と相俟って露呈している。アメリカでは、上位10%の所得層が全体の所得の50%を占め、この20年で割合は10ポイント上がった。ドイツや日本も40%近くで、上昇傾向にある。ヨーロッパの研究機関『ブリューゲル』は、先のイギリスの国民投票について、「所得格差や貧困の目立つ地区にEU離脱票が多い」と分析したリポートを出した。抗議の投票を広げない為に、「全ての層にチャンスを創り出す経済成長が重要になる」と説く。多面的な対応がいる。情報技術の進歩で職を追われる人に、研修や訓練の機会を増やして再起を支える必要がある。親世代の貧富が子の教育を決定付けない仕組み作りや、不平等を是正する賃金や税制の見直しも課題だ。経済成長と分配の適切なバランスを取り、好循環を起こす視点が欠かせない。持続的な財源を確保し、創意や勤労意欲を阻害しない賢明な制度を作ることが大切だ。グローバル化の否定は、世界経済を縮小均衡に導き、抗議の票を投じた民衆の不満を倍加させる。ペルーでの『アジア太平洋経済協力会議(APEC)』で、首脳は「あらゆる保護主義に対抗する」と確認した。実際はどうか。「西側の制度を問う」。中国の新華社通信は、醜聞合戦のアメリカ大統領選挙を材料に、欧米の民主主義や非効率を皮肉る評論を8日連続で配信した。だが、トランプ氏の勝利後に批判はぴたりと止んだ。「起こり得ない」と思われた筋書きが次々と実現する不確実性の時代。新たな力学を巡る駆け引きは、随所で始まっている。(編集委員 菅野幹雄)


⦿日本経済新聞 2016年11月25日付掲載⦿
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