【経済の現場2016・農業再生】(01) 全農改革“負けて勝つ”

政府は今日、農業の競争力強化を狙った改革案を正式に決定する。日本の農業は、活力を取り戻すことができるのか。“農業再生”に向けた課題と取り組みを追う。

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永田町の自民党本部。9月27日に開かれた農業関係の会合で、同党農林部・小泉進次郎会長(35)の良く通る声が響いた。「高さを1㎝や1㎜変えた段ボールを、態々コストをかけて作ることに、どんな意味があるんでしょうか? 農業関係者に私は問いたい」。背後には、ある県で出荷用に使っている118種類の段ボール箱が積み上げられていた。日本の農業が如何にコスト意識に欠けているか。居並ぶ自民党議員や『全国農業協同組合連合会(JA全農)』関係者らに見せつけた。日本の農産物は生産コストが高い。農林水産省によると、農業用資材の内、肥料は韓国と比べて約2倍、農薬は約3倍もする。全農は「農家の要望に応えた」「品質が違う」と反論するが、肥料では、主要成分が同じものが163銘柄も登録されていた。多品種・少量生産で、資材は割高になる。価格競争力は失われ、農家の手取り収入は減る。農業の現場には、“118種類の段ボール”に似た事例が其処彼処に広がっていた。小泉氏は言う。「農業界に『変わらなくていいんだ』という空気が出るとしたら、それこそが日本の農業の最大の脅威だ」。農業改革の必要性・方向性は明確だったが、具体案の取り纏めは難航した。発端は、『規制改革推進会議』の作業部会が今月11日に示した抜本改革を求める提言だった。

提言は、全農に対し、農業用資材の仕入れ・販売からの撤退と、全ての農産物を買い取って販売する方式への転換を、其々1年以内に行うよう求める内容だった。自民・公明両党からは、「非常に高い球だ」「急進的過ぎる」と批判の声が相次いだ。小泉氏に理解を示し、JAグループ内で改革の旗を振ってきた『全国農業協同組合中央会(JA全中)』の奥野長衛会長(69)をしても、「承服し難い」という内容だった。今月25日、農林関係の合同会議で、農業改草案『農業競争力強化プログラム』が了承されると、小泉氏は記者団に「苦しんだことも事実だが、“負けて勝つ”かな」と語った。改革案では、規制改革推進会議の作業部会が提言した“1年以内”等の期限設定等は見送り、改革を全農の“自己改革”に委ねた。一方で、全農に農業用資材事業の縮小等、具体的な数値目標を盛り込んだ年次計画を公表させ、政府・与党が進捗を管理する。譲るべきは譲り、貫くべきは貫いた――。こうした思いが、“負けて勝つ”との言葉に込められていた。改革案について、北海道幕別町の酪農家・田口広之さん(56)は、「競争原理が働くようになり、農業用資材の価格が下がるだろう」と期待を寄せる。兵庫県姫路市のコメ農家・衣笠愛之さん(55)も、「全農が変わり始めるきっかけになるのではないか」と評価した上で、「もっと短い猶予期間で改革を迫ってほしかった」と話す。全農の中野吉実会長(68)は「農業者の為の改革を、スピード感を持って進める覚悟だ」と話すが、“自己改革”が甘いものになれば、農家はメリットを感じられず、競争力も高まらない。農業の構造改革は加速するのか、それとも小手先の“改革”に止まるのか。昨日夕、首相官邸で開かれた規制改革推進会議の全体会合で、安倍首相は「農業者、延いては国民にもわかる成果や数値目標を掲げ、生まれ変わるつもりで自己改革を進めて頂きます」と釘を刺すのを忘れなかった。

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■就農人口、20年で半減
日本の農業は衰退が続いている。農林水産省によると、農業就業人口は、20年前の414万人から210万人に減った。農業総産出額は10.4兆円から8.4兆円に、農業所得は4.6兆円から2.8兆円に、其々落ち込んだ。一方、平均年齢は66歳に上昇し、耕作放棄地は富山県と同じ規模の42万haに広がった。人口減に伴って、国内市場が縮小する中、内向き志向ではジリ貧は避けられない。世界の人口は、今の73億人から、2050年に97億人に増加すると見込まれ、世界全体でみれば、市場は大きく拡大する見通しだ。生産性を上げて、海外への輸出を増やすような発想の転換が求められている。


⦿読売新聞 2016年11月29日付掲載⦿

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