FC2ブログ

【食肉大戦争2020】(06) TPPや日米貿易協定でも豚肉価格は下がる気配なし



20200224 11
国産豚肉の価格動向は、国内の生産量と関連している。豚肉生産は、暑さから6~8月に減少し、涼しくなると増加に転じる。これを反映して、豚肉価格は需給が逼迫する6~7月に上昇し、東京市場で1㎏当たり600円を超えることもある(※上格付けの豚肉)。その一方で、需給が緩まる10月~翌年3月頃まで同400円台前半、日によっては400円を割り込み、300円台後半まで低迷する。但し、年末需要のある11月下旬~12月上旬は上昇する(※図1)。これが一般的な価格動向なのだが、今年は底堅い動きをしている。10月25日現在の価格は498円と、500円に迫る高い水準となった。価格高止まりの原因としては、昨夏来、中国や東南アジアでアフリカ豚コレラがパンデミック状態になっていることが非常に大きい。更に、ワクチンも治療法もないアフリカ豚コレラに見舞われて養豚数が激減した中国が、スペインやデンマーク等、欧州からの豚肉輸入を増やしている。欧州豚肉は国際相場に影響を与え易い為、需要増が国際価格高騰を招く。更に、日本国内特有の事情として、9月末までで14万頭を超える豚コレラ患畜の殺処分が影響していると考えられる。豚コレラは2018年9月に岐阜県で確認され、1年以上経た今年10月でも依然として発生が続いている。これほど長期間、且つ広い地域に感染が拡大している主因は、初動の封じ込めに失敗したことである。今年10月5日からは、岐阜、愛知、埼玉、福井、長野、三重、滋賀、富山、石川、群馬、静岡の11県で順次、豚コレラワクチンの接種が始まった。ワクチン接種は2006年以来13年ぶりになるが、取り敢えずは感染防止に一定の目途がつけられた。

20200224 12
日本の豚コレラ問題はワクチン接種で一息ついたものの、中国等で発生しているアフリカ豚コレラによって国際相場が更に高騰することが予想される為、それにつられて国産豚肉も輸入豚肉も高止まりする可能性が高い。日本のハム・ソーセージメーカーや輸入商社は昨年来、アフリカ豚コレラに端を発する供給不足によって、中国が輸入を増やすことを懸念していた。そこで、中国の“爆買い”が始まる前に、原料豚肉も早期手当てに入ったようだ。欧州産豚肉の輸入量が、日欧EPAが発効した2月と、EPAが2年度目に入り、関税が更に下がった4月に急激に増加している(※図2)。しかしながら、日本の冷凍倉庫も満庫状態で、これ以上豚肉を保管するスペースがなくなりつつあり、加えて海外からの豚肉の供給が少なく、買い付けに苦労しているとの声も聞こえてくる。豚肉加工品に広く使われている輸入冷凍豚肉の価格も、外食や中食向けのチルドポークも、供給不足から長期的な値上がりは避けられず、ハム、ベーコン、ソーセージや餃子に加えて、トンカツやラーメン用の焼き豚等、身近な食材である豚肉も豚肉製品も、年末以降来年からは“高根の花”の高級食材になってしまう恐れがある。ところで、TPPや日欧EPA、日米貿易協定について、豚肉は重要品目としての位置付けで、日本は相当譲歩して関税を大きく引き下げたと言われてきた。実際に、従来の従量税1㎏当たり482円を同125円に下げた等と報道されると、大きな関税引き下げのように見える。しかし、この従量税は、輸入価格が1㎏当たり0~524円の豚肉に原則として適用される関税譲許表(※特定産品の関税率を国毎に纏めた一覧表)上の額である。

20200224 13
後述するように、実務面で日本の輸入価格は1㎏当たり524円に張り付いており、この税額は殆ど適用されないのだ。図3は、この12年間の豚肉の輸入価格と、実際の㎏当たりの関税額等をグラフにしたものである。牛肉の輸入価格が200~600円台で変化しているにも拘わらず、豚肉の輸入価格が一定なのは異様だ。殆どの時期で、牛肉より豚肉のほうが高いことにも注目したい。これは、豚肉の差額関税制度(※分岐点価格輸入制度)という日本だけの特殊な輸入制度による。同制度では、分岐点価格(※1㎏当たり524円)が最も関税額が少なくなる。輸入額が分岐点価格を超えれば、従価税(※価格の割合で課される税。従来は4.3%)が課され、逆に分岐点価格より低い輸入価格ならば、基準輸入価格(※524円×104.3%=546円)との差額を徴収される。例えば、1㎏当たり300円の豚肉を輸入すれば、差額関税は同246円(※546円-300円)で、実に82%と非常に高率の関税となる。この制度は、導入当初は安い豚肉の流入を防ぐ国内農業保護色の強い政策と説明されていたが、実際は全く機能せず、当時から既に意義を失っていた。この制度の下、豚肉輸入自由化の1971年から約半世紀に亘って、分岐点価格に張り付かせる形での輸入が続いており、分岐点価格が事実上の最低輸入価格として機能している。そして、分岐点価格に合わせる為に使われているのが、コンビネーション輸入である。高い肉と安い肉を組み合わせることで、1㎏当たり524円になるように調整していた。

20200224 14
コンビネーション輸入とは、安い部位と高い部位を組み合わせることだ。ヒレやイベリコ豚等高価格の豚肉と、細切れ、切り落とし等の低価格の豚肉を合わせて輸入する。2010年代に入り、アメリカからの豚輸入は減っている(※図4)。アメリカは、豚肉の部位毎の価格情報が公開されている為、輸入コストを上乗せすれば、輸入価格の積算は容易である。日本の税関がこれらの資料を基に調査すれば、事後調査で1㎏当たり524円(※若しくはその近辺価格)ではないことが露見し、巨額の追徴課税をされるリスクが高いことが主要因である。一方、スペインにはコンビネーション輸入を組むのに便利な高価格帯のイベリコ豚があり、日本のハム・ソーセージメーカーから引き合いの多いソーセージ原料の切り落としや、ハム原料のモモ肉の比率を多くできる。欧州では部位毎の価格情報が殆ど公開されておらず、価格根拠をブラックボックス化できるのだ。では、実務上の輸入価格である分岐点価格の関税率は、貿易協定によってどう変わったのだろうか? 従来は4.3%だったが、TPPが発効した今年1月に2.2%、2年度目の4月以降は1.9%だ。1㎏当たり23円(※524円×4.3%)から10円(※524円×1.9%)に下がっただけなのである。100g当たり1.3円の値下がりに過ぎず、為替レートや豚肉相場の動きと比べれば誤差の範囲だ。貿易協定による関税引き下げがあろうと、コンビ輸入とセットとなった差額関税制度がある限り、輸入価格は殆ど変わらない。但し、アフリカ豚コレラの影響で国際価格が急騰すれば、輸入豚肉の価格も底上げされ、その時には庶民の食材だった豚肉は高級品になっている筈である。 (『ブリッジインターナショナル』代表 高橋寛)


キャプチャ  2019年11月26日号掲載



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

あぐー豚 豚肉 送料無料 しゃぶしゃぶ 豚 肉 1000g
価格:9960円(税込、送料無料) (2020/2/23時点)


スポンサーサイト



テーマ : 食に関するニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

产品搜索
广告
搜索
RSS链接
链接