【ヘンな食べ物】(15) 辺境の村、究極の御馳走

前回、ミャンマー・ワ州の村では只管、毎日3食、菜っ葉か韮の類いしか入ってない雑炊(モイック)を食べているという話をした。私が死ぬほどそれに飽きていたことも。しかし、そんな彼らにも御馳走というものがあった。出産・婚礼・葬式の時には、必ず家畜を潰し、祖先の霊に供えてから、村人が集まって一緒に食べる。家畜の種類は、儀礼の規模によって決まっている。出産は鶏か子豚、葬式は豚、婚礼は豚か牛といった具合だ。辺境の村では人生のサイクルが早く、冠婚葬祭は週に1~2回は必ずあった。そんな日は、朝早くから色んな人が「おい、今日は豚肉食うぞ!」等と嬉しそうに声をかけてくる。葬式であっても、遺族以外は皆、ニコニコ顔だ。「やっぱり皆、モイックには内心飽きているのだな」と最初は思ったが、大きな勘違いだった。何故なら、御馳走は“肉入りモイック”だからだ。肉はぶつ切りにして、雑炊の鍋にぶち込む。鶏や子豚の時は集まる人が少なく、豚や牛の時は多いから、結局、1人当たりの肉は2切れか3切れだ。しかも、肉汁が雑炊に流出しているから、あまり味がしない。かといって、雑炊が劇的に美味くなっているかというと、そんなことはなく、盛り蕎麦がざる蕎麦になった程度だ。「あー、この肉、焼くか炒めるかしたら凄く美味いんだろうな…」といつも思っていたので、私が村を去るに当たり、お世話になった皆さんに牛を潰して振る舞った時には、躊躇いなく“ご飯と牛肉妙め”にした。すると、人は大勢集まってきたものの、葬式のように黙々と食べている。いや、葬式でもどんちゃん騒ぎが普通なので、こんな盛り下がった宴会は初めてだった。「やっぱり、モイックがよかったのか…。皆、ゴメン!」と心の中で叫んだのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月1日号掲載
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