【劇場漫才師の流儀】(121) M-1前哨戦
3月1日15時より『漫才Loversスペシャル 第9回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)が生放送されます。僕が第1回大会から審査員を務める思い入れの強い大会で、ローカル放送ながら近年は『霜降り明星』や『からし蓮根』が優勝する等、今や『M-1グランプリ』(朝日放送・テレビ朝日系)の前哨戦のような趣さえあります。同大会はROUND1からROUND3、其々の予選を勝ち抜いた上位2組ずつ、計6組で争われる“決勝戦”です。今年の出場者は、『ビスケットブラザーズ』・『カベポスター』・『ニッポンの社長』・『蛙亭』・『マユリカ』・『紅しょうが』の6組(※出番順)。皆吉本ですが、全組知っているという人は相当な若手漫才通でしょう。今回は、1月に行なわれたROUND3で上位2組には残れなかったけど、印象的だったコンビを振り返りたいと思います。ここで、僕が一番高得点(※92点)をつけたのは『さや香』でした。2017年にM-1決勝に出たので、知っている方も多いのではないでしょうか。でっかいほう、ボケの新山君の高めのテンションと野太い声、覚えていませんか? 彼は『ジャルジャル』の後藤君に似ていると話題になったこともありましたが、最近、新山君が太って似率が下がっています(笑)。
そのさや香は、「北海道、大き過ぎるやろ!」という振りでスタートするネタを披露したのですが、その着眼点が独特で面白かった。どんなオチなのか興味湧いてくるでしょ? 賞レースは時間が短いので、出だしのフレーズで観客を引き込むことも大事になってきます。ただ、これは若手の傾向なんですが、今回もデートネタが非常に多く、2位になったマユリカを含め、3組がデートをテーマにしていました。発想が新鮮であればそれでもいいのですが、賞レースではどうしても後の組になればなるほど、「またデートネタや」という感じを覚えて損をしますね。話をさや香に戻しますが、上手くなったし、ネタも進化している。彼らのように研究熱心で成長できるコンビは、早いところ東京で勝負をかけてもいいと思います。東京で売れると、大阪では見られない景色が見られるからね。勿論、誰もが簡単に東京よしもと扱いになれるわけではないんですが、2人ならその景色を見られる気がします。他では、『もも』というコンビも印象に残りました。2017年に結成した若いコンビですが、2018年、2019年とM-1では準々決勝まで進んでいます。僕は初めて見たのですが、彼らの見た目を逆手に取ったようなネタで、とても新鮮でした。未だそこまで完成度は高くないので、今回は6位に終わりましたが、彼らは近い将来、きっと出てくると思います。勿論、それには条件があります。やる気です。簡単でしょう(笑)。力のあるコンビが本気になったら必ず売れるというのは、昨年のM-1で『ミルクボーイ』が証明したばかり。やる気スイッチを押して本気になったらええんよ。
オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(共にワニブックス)。
2020年3月9日号掲載
そのさや香は、「北海道、大き過ぎるやろ!」という振りでスタートするネタを披露したのですが、その着眼点が独特で面白かった。どんなオチなのか興味湧いてくるでしょ? 賞レースは時間が短いので、出だしのフレーズで観客を引き込むことも大事になってきます。ただ、これは若手の傾向なんですが、今回もデートネタが非常に多く、2位になったマユリカを含め、3組がデートをテーマにしていました。発想が新鮮であればそれでもいいのですが、賞レースではどうしても後の組になればなるほど、「またデートネタや」という感じを覚えて損をしますね。話をさや香に戻しますが、上手くなったし、ネタも進化している。彼らのように研究熱心で成長できるコンビは、早いところ東京で勝負をかけてもいいと思います。東京で売れると、大阪では見られない景色が見られるからね。勿論、誰もが簡単に東京よしもと扱いになれるわけではないんですが、2人ならその景色を見られる気がします。他では、『もも』というコンビも印象に残りました。2017年に結成した若いコンビですが、2018年、2019年とM-1では準々決勝まで進んでいます。僕は初めて見たのですが、彼らの見た目を逆手に取ったようなネタで、とても新鮮でした。未だそこまで完成度は高くないので、今回は6位に終わりましたが、彼らは近い将来、きっと出てくると思います。勿論、それには条件があります。やる気です。簡単でしょう(笑)。力のあるコンビが本気になったら必ず売れるというのは、昨年のM-1で『ミルクボーイ』が証明したばかり。やる気スイッチを押して本気になったらええんよ。
オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(共にワニブックス)。
2020年3月9日号掲載
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