【防衛産業と技術】(上) 海外企業幹部に聞く――リー・ドハーティ氏(『ロールスロイス』上級副社長)

『武器輸出三原則』を緩和する議論が大幅に進んでから約3年。防衛装備品の輸出や共同開発の動きは少ない一方、ここに来て、海外企業が日本の防衛産業への関心を高めている。防衛省向け等での取引の他、民生分野も含めて協業しようという狙いが明確になってきた。海外勢の幹部に、日本企業とのビジネスの現状や、今後の意向を聞く。

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――日本企業との協力関係は進んでいますか?
「2019年度から日本に納入され、陸上自衛隊が使う新型輸送機“オスプレイ”のエンジンの整備で、川崎重工業と協力する。同社の明石工場(兵庫県明石市)で整備することになるだろう。オスプレイは機体がボーイング製で、エンジンはロールスが手掛ける」
「日本向けのオスプレイは、アメリカ国外に輸出される第1号案件となるので、アメリカ国外で初めてのエンジン整備拠点になる。契約期間や金額は、防衛省との交渉で決まる。顧客と話して要件が明確になるだろう」

――海外輸出に向けて、日本企業とどのように協力しますか?
「ロールスには技術がある。新明和工業の飛行艇“US2”のエンジンは、ロールスが生産している。新明和が輸出を目指すインドでは、ロールスもプレゼンスがある。ただ、エンジンの整備をどこでやるかはインド政府次第だ」
「日本向けでは輸送機“C130”等、約700台のエンジンを手掛けた実績がある。日本国外では、エアバスの新型輸送機“A400M”のエンジンも生産している。同機はマレーシアやトルコへも輸出する予定で、各国の関心は高い」

――ロールスにおける防衛産業の位置付けは?
「ロールスは従業員が約5万人で、46ヵ国に展開しているグローバルブランド。世界2位のエンジンメーカーで、1万6000台のエンジンを顧客に供給した。防衛産業は、当社の重要な事業の1つだ」
「エンジンの発する熱を管理する技術に優れており、日本の防衛省が望めば、次期戦闘機についても協力できる。ロールスには経験と能力、日本での実績もある。垂直離着陸機能を有するロッキードマーチンのステルス機“F35B”のエンジンの一部の他、ヨーロッパの戦闘機“ユーロファイター”にもエンジンを供給している」 (聞き手は花房良祐)

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■日本の官民、手探り続く
日本政府は長く、原則として武器の輸出を禁止する方針を取っていたが、安倍晋三政権の下で2013年に議論が加速し、翌2014年4月、新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』の運用が始まった。移転を禁止する場合の基準の明確化等を謳い、輸出条件は大幅に緩和されたとされる。ただ、現状をみると、日本の防衛装備品の輸出は進んでいない。オーストラリア向けの潜水艦ではフランス、イギリス向けの対潜哨戒機の商戦ではアメリカに敗れた。インド向けの救難飛行艇は商談中だが、価格を巡る溝は埋まっておらず、トルコ向けの戦車用エンジンの交渉も頓挫した。自衛隊が今年8月末に静岡県の東富士演習場で実施した実弾射撃訓練『富士総合火力演習』を取材した。約2万7000人が観覧する大がかりな国内最大の演習は、10式戦車等の砲撃を実施した。高速走行や急停止をしながら、目標に正確に命中した。日本の戦車と輸出を巡っては、トルコ政府が戦車用エンジンの共同開発を2013年に日本に持ちかけた。だが、トルコはアゼルバイジャン等への輸出も計画。第三国への輸出を巡る立場が埋まらず、共同開発の計画は立ち消えとなった。自衛隊の戦車は『三菱重工業』が中心となり製作。生産には国内企業約1000社が関わっているが、調達台数の減少でメーカーの苦しさは増している。輸出は、生産コストと産業基盤の維持にも繋がる筈だった。武器輸出三原則の新要件は、国際条約に違反する場合・国連安保理決議違反の場合・紛争当事国への移転――を禁じる。加えて、移転する場合は、“平和貢献・国際協力の推進に資する場合”や“日本の安全保障に資する場合”に限定している。ある大手企業幹部は、「よく読むと、輸出できる国はあまり無い」と打ち明ける。平和国家としての基本理念を維持しながら、外国政府の関心にどう対応していくか。手探りが続いている。 (花房良祐)


⦿日経産業新聞 2016年11月15日付掲載⦿

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

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