【霞が関2016秋】(20) 整備新幹線で相次ぐ想定外…政治主導の盲点

整備新幹線で想定外の事態が相次いでいる。九州新幹線長崎ルート(博多-長崎)での車輪の幅を変えられる新型車両『フリーゲージトレイン(軌間可変電車)』の実用化や、北海道新幹線の青函トンネル内を高速走行する為の技術開発の遅れが顕在化。国土交通省が計画の修正に追い込まれた。共通するのは、政治主導で建設に突き進んだが、実務面の詰めが甘かった点だ。「現時点で耐久性があると判断するのは難しい」。国交省は今月18日、フリーゲージトレインの開発の遅れを認めた。来年1月頃に予定していた耐久走行試験も、来夏以降に先送りすると表明した。フリーゲージトレインは、車輪の幅を変えることで在来線と新幹線を行き来することができる新型の車両。建設中の九州新幹線長崎ルートで活用する為、1997年に開発が始まった。2014年には走行試験を始めたが、その直後に不具合が見つかった。試験は2年以上も中断されたが、更に半年近くも先延ばしとなった。不具合への対策を進めた結果、車両の製造と維持管理のコストは、通常の新幹線の2.5~3倍に跳ね上がる見通しだ。『九州旅客鉄道(JR九州)』は、「このままでは導入が難しい」と頭を抱える。国交省はコストを削る方策を検討するものの、実用化への黄信号が灯っている。長崎ルートでは武雄温泉(佐賀県)-長崎の建設が着々と進んでおり、2022年度にも完成する予定。博多から長崎に向かう場合、当初は武雄温泉で在来線の特急から新幹線に乗り換える必要のある“リレー方式”で凌ぐ。フリーゲージトレイン導入の見通しが立たない中で、ちぐはぐな対応が目立つ。今年3月に開業したばかりの北海道新幹線も迷走している。青函トンネルは在来線と共用の為、新幹線は特急並みに速度を落として走っている。

国交省は、2018年春に在来線と新幹線が走る時間帯を分けて高速走行する案を検討してきたが、このほど先送りを決めた。高速走行に必要なレール整備の作業等が間に合わないという。一般的に、航空機より新幹線を選ぶ目安は4時間未満とされる。東京-新函館北斗は最短4時間2分かかる。国交省は、「新幹線の運行本数を減らさない限り、年に数日しか“4時間切り”はできない」との見通しも公表。開業前に見込んだ経済効果に、疑問符が付き始めている。既に新函館北斗から札幌までの工事に着手しており、2030年度末の開業を見込む。当初は20年ほどかかる計画だったが、与党内に早期開業を求める声が多く、前倒しが決まった。ただ、新幹線の高速走行を優先すれば、本州と北海道を結ぶ貨物輸送に影響が及ぶ可能性もある。北陸新幹線では、建設中の区間に新駅を造る構想が突如持ち上がった。石川県が、金沢駅と小松駅の中間に白山駅(石川県白山市)を設ける案を与党に示した。「建設中の区間は、投入した費用を上回る経済効果が得られる」との試算だが、仮に駅を追加すれば、建設コストや時間短縮効果が従来の想定と変わってくる。整備新幹線は、色々な意味で“政治主導”が最も進んでいる分野の1つだ。与党の『整備新幹線建設推進プロジェクトチーム』(座長は自民党の茂木敏充政調会長)が計画段階から関与し、予算の確保や建設期間の短縮等、政府に事細かな注文を付ける。ある与党議員は、「官僚が『できない』と言うのをやらせるのが政治家の役割」と話すが、実務的な検証が後回しになり、「兎に角、早く造れ」という雰囲気に流れがちになる。永田町では、北陸新幹線の敦賀(福井県)から新大阪への延伸ルートを決める議論が盛り上がっている。田中角栄元首相の下、国が新幹線の整備計画を定めたのは1973年。当時とは人口や財政の状況が大きく変わったが、“我田引鉄”は強まっているようにみえる。 (木原雄士)


⦿日本経済新聞電子版 2016年11月22日付掲載⦿
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