【「佳く生きる」為の処方箋】(29) 大学病院は“急がば回れ”

先日、家族が39℃の熱を出しました。そんな時は、自分が院長を務める順天堂医院で直ぐに診察を…。いえいえ、そんなことは決してありません。高熱とはいえ、自分で歩いて行ける状態なら、先ずは自宅近くのクリニックで受診するのが基本。大学病院に行くかどうかは、その結果次第です。幸い、普通の風邪でしたから、その必要もありませんでしたが。前置きが長くなりましたが、今回は大学病院の上手な受診の仕方についてお話ししたいと思います。熱が出たり、お腹が痛かったりして具合が悪い時、貴方ならどの医療機関にかかるでしょうか? 近所のかかりつけ医や職場近くのクリニック等で受診する人が多いと思いますが、中には最初から大学病院のような大きな病院に行く人もいます。「どうせ行くなら設備の整っているところがいい」「医療レベルが高いから安心」等と考えるのでしょう。しかし、初診からいきなり大学病院に飛び込むのは、患者さんにとって得策とは言えません。第一に、費用が余計にかかります。大学病院等500床以上の大病院には、地域の診療所や中小病院との連携を進める責務が国から課せられています。患者さんは最初にそれらの医療機関で診てもらい、必要があれば大学病院に紹介されるというのが正規のルートなのです。勿論、救急患者の場合はこの限りではありません。これは、診療所や中小病院と大学病院との機能分化を推し進める為のもの。風邪や軽い怪我等に対しては地域の診療所等が窓口になり、重い病気や重傷の場合は大学病院が高度で専門的な医療を提供するという役割分担なのです。

極端な話、風邪等の患者さんが大学病院に押し寄せ、その為に重病の患者さんを十分に診られなくなったら本末転倒です。ところが、現状は大病院の外来患者の半数以上が、紹介無しの、謂わば“いきなり受診”だという報告もあるのです。こういった状況を打開する為、紹介無しで大学病院に来られる患者さんには、特別な料金を支払って頂くことになっています。“選定療養費”と呼ばれるもので、税込みで5400円。馬鹿にならない額です。また、待ち時間の問題もあります。例えば順天堂医院の場合、平均の外来待ち時間は90分程度。これは予約診療の場合も含みますから、紹介無しの初診だともっとかかることに。病院としても改善したいのは山々ですが、1日に4000人近い患者さんが外来受診する現状では、中々難しいものなのです。では、正規のルート、つまり近くのかかりつけ医経由で大学病院にかかる場合はどうでしょう。患者さんは、その医師に“診療情報提供書”を作成してもらい、大学病院に提出することになっています。これは一般に“紹介状”と呼ばれていますが、単に「この患者さんを宜しくお願いします」といった挨拶文ではなく、患者さんの症状・検査結果・服用している薬等、治療に関する情報を纏めたものです。レントゲンやCT検査等の画像診断の結果も含まれており、大学病院側の医師にとっては、診療を効率的に上手く進める為に非常に重要です。患者さんにしてみても、新たな検査を受ける負担が減り、選定療養費もいりませんから、費用も節約できます。事前に送っておけば電子カルテに組み込んでもらえますので、その分、当日の待ち時間も短縮されます。謂わば、外来初診での“早い・うまい・安い”が実現可能なのです。これから大学病院の受診を考えている方には、メリットの多い正規ルートをお薦めします。まさに“急がば回れ”です。


天野篤(あまの・あつし) 心臓外科医・『順天堂医院』院長。1955年、埼玉県生まれ。日本大学医学部卒。『亀田総合病院』『新東京病院』等を経て、2002年に順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月18日に天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀。2016年4月より現職。著書に『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)・『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』(NHK出版新書)等。


キャプチャ  2016年12月1日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR