単なる芸能事務所を特別扱い…大手メディアは何故『ジャニーズ事務所』の“お家騒動”を報道しないのか?

20161202 08
『世界に一つだけの花』で知られる『SMAP』が、2016年末をもって解散する――。『ジャニーズ事務所』から報道各社に伝えられたのは、同年8月14日未明。寝耳に水で、テレビ各局は直ぐさま速報テロップを流し、NHKはリオデジャネイロオリンピック中継を中断し、約2分間の臨時ニュースとして報道した。リーダーの中居正広は、「このような結果に至った事をお許し下さい」。木村拓哉は、「この度の“グループ解散”に関して、正直なところ本当に無念です」とコメント。折しもデビュー25周年、記念ツアーも予定されていただけに、ファンからは悲鳴に似た落胆の声が上がり、各界からも解散を惜しむ言葉が数多く寄せられた。翻って同年1月、日刊スポーツとスポーツニッポンが“SMAP解散危機”として、「木村を除く4人が、退社する飯島三智マネージャーに従い、独立を画策している」と報じて大騒動に。それは、安倍晋三首相か衆議院予算委員会でSMAP存続を歓迎する発言をしたほどだった。“造反組”の4人はジャニー喜多川社長に謝罪し、元の鞘に収まることで一応の決着をつけ、『SMAP×SMAP』(関西テレビ/フジテレビ系)で5人全員が並んで謝罪したのは記憶に新しい。だが、その7ヵ月後、急転直下の解散発表となった。筆者は本誌3月号の『SMAPを壊した独裁者メリー』という記事で、「契約更改の9月を目途に一波乱ある」と書いたが、残念ながら予言通りとなった。一体何故、こんなことになったのか。「木村とそれ以外の4人の確執が決定的でした。特に、香取は木村に対して『許さない』と公言するほど敵意剥き出しで、関係は修復不可能。一緒にステージに立つことも不可能でした」(芸能関係者)。解散発表前、事務所に対して香取は「休止という中途半端なことならば解散したい」と口火を切り、草彅剛も「もう解散しかないと思います」と追随。稲垣も同意した。SMAP存続を願う中居も、3人の強固な意志を見て、最終的に解散に納得した。だが、その場所に唯一いなかったのが木村。「事務所の方針に従う」とし、ハワイで休暇中だった。この物理的な距離こそが、事務所に追従する“本流”の木村と、“傍流”4人の埋め難い深い溝だった。最早、「解散するべくしてすることになった」と言っても過言ではない。とはいえ、どんなグループにも感情的な対立は付き物だ。「問題は、メンバー間の確執以上に、ジャニーズの企業体質にあるのです。各界に対するその支配力は頂点に達していて、SMAPの解散劇でわかったように、最早多くの弊害を生んでいる」(前出の芸能関係者)。

ジャニーズ事務所は、タレントを発掘し、プロデュースするジャニー氏と、実質的経営者であるメリー喜多川副社長という80代の弟姉によるファミリー企業である。『フォーリーブス』や郷ひろみ等、数々の男性アイドルを先り出し、1990年代にはSMAPの大成功により、年商1000億円と言われる規模に躍進した。ジャニー氏は独身で子供はおらず、メリー氏には1人娘のジュリー藤島副社長がいる。「ジャニーズは非上場の上、情報は一切公表しない方針。経営の透明性が確保されていない為、社会的影響力が大きい割には実態がわからない。親族各自の推定年収は数億円とされ、総資産1000億円と言われる富は彼らに集中している。それに比べると、社員の給与水準は低い。タレントも言いなりで、“ブラック企業”という批判もある」(経済紙記者)。デビュー当時、事務所から「売れない」と判断されたSMAPを大スターに押し上げた功労者は飯島氏だが、メリー氏が次第に、彼女のことをジュリー氏を脅かす存在と危険視するようになったという。決定的な亀裂は、2015年1月の選刊文春によるメリー氏に対するインタビューでのこと。同誌が巷間噂されるジュリー派と飯島派について問うたところ、メリー氏は激昂。「私の娘が次期社長」と言い、飯島氏を呼び出し、記者の前で叱責した。「うちの娘と飯島が争うなら、私は飯島に『出て行け』と言うしかない。だって、飯島は私の子供じゃないんだもの」と結んだが、完全なパワハラである。筆者も以前、メリー氏と事務所で対峙した経験があるが、一方的な主張を捲し立て、恫喝は数時間に及んだ。多くのメディア関係者が同様の目に遭っており、事務所の力を背景に意のままにしようとするやり方は、皮肉にも効力を発揮している。公共の電波を預かるテレビ局が顕著で、ジャニーズに不利益なことはタブー中のタブーだ。その理由としては、番組でジャニーズのタレントを多用している為だが、同業他社と比較しても異常なほどの気の遣いようだ。2001年、公務執行妨害と道路交通法違反(駐車違反)で渋谷警察署に現行犯逮捕された稲垣は、テレビの報道では“容疑者”ではなく“メンバー”と言い換えられた。また2011年、ジャニー氏の自宅に見知らぬ男が侵入した事件で筆者が渋谷警察署を取材した際、副署長から「ジャニー氏のことで変なこと書くと、貴男、大変な目に遭うよ」と“忠告”されたこともある。「公権力さえも一芸能事務所を特別扱いするのか」と驚きを禁じ得なかった。無論、6兆円の市場規模を持つ広告産業も同様と言っていい。メディアがジャニーズの影響力を肥大化させているのである。今から17年前、週刊文春がジャニー氏の少年に対する性的行為を告発した際、『ニューヨークタイムズ』のカルビン・シムズ記者は筆者にこう語った。「1つの企業がメディアを完全に支配していることなど、先進国では絶対にあり得ないし、これほど深刻な問題を世間が全く知らないというのも、明らかに異常だ。民主主義の根幹である表現の自由を疎かにしている日本は、とても先進国とは言えない」。彼の言葉は未だに生きているどころか、年月を経て尚も重みを増している。 (フリージャーナリスト 中村竜太郎)


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