【仁義なきメディア戦争】(03) “皆様”のNHKはどう変わるべきか…2人のキーマンに訊く

『放送倫理・番祖向上機構(BPO)』で、放送倫理検証委員会の委員を務める是枝裕和氏。表現者の1人として、NHKをどう見るか?


20161205 08
――現在のNHKを評価してほしい。
「危機的状況にある。ジャーナリズムの側面から見ると、“政府広報”の報道に徹していて、批判能力が失われている。会長人事と予算執行権を国に握られていては、政府の批判などできる訳がない。公共放送なのだから、公権力から独立した存在であるべき。NHKが国営放送のように大本営発表をするようになったら、本当に危険。『お金は国民が出すのに口は国が出す』というのは矛盾している。“映画監督”と呼ばれることが多くなったが、自分自身は今でも“放送人”のつもりだ。国民の共有財産である電波を利用する放送は、『目先の国益を最優先に考えるのではなく、社会の成熟に寄与する価値観を提示しなければならない』と考えている」

――具体的には?
「NHKの新人職員は、地方勤務となることが多い。地元との信頼関係を築き、地域の情報をどのメディアよりも幅広く深く掴んでいる。このことを存分に生かしてはどうだろうか。視聴率を意識しない番組作りができるのは、受信料収入で成り立っているNHKならでは。ゴールデンタイム(19~22時)に放送する調査報道番組がもっと多くてもいい」

――政治との距離感は?
「BPOの委員を務めるようになってから、公権力と放送局の関係や、放送法についての歴史を遡って調べた。1950年に放送法が制定された当初は、“電波管理委員会”という行政機関の外局、つまり政府から独立した機関が監督権を持っていた。放送法は、この電波管理委員会が存在することを前提に作られた法律であり、公権力と放送が結託したことで齎された不幸な過去への反省からスタートしている。だが、1952年に同委員会が廃止され、放送法はそのままに、監督権だけが郵政省(現在の総務省)に置き換えられた。政府は再び、放送を巡る権益を取り戻したという訳だ。放送局が権力下に組み込まれ、規律される関係へと逆転した」

――放送法に問題がある、と。
「解釈の問題だ。『放送法で取り締まられている』等と話す放送人がいるが、本来は全く逆。放送法第1条では、“不偏不党”を放送局に保障している。その根本的な精神は憲法に通じている。総務省の高市早苗大臣は以前、放送局が政治的な公平性に欠ける放送を繰り返した場合の“電波停止”の可能性に言及したことがあったが、放送と放送法の成り立ちを無視した発言だ。NHKを始め、放送局はメディアスクラムで抵抗するべき。国民も疑問を持たなければ、公権力による情報統制が進みかねない」

総務省の高市早苗大臣は、今の放送を取り巻く環境をどう見ているのか。


20161205 09
――放送業界が直面している課題とは?
「大きな変化が起きつつある。多くのテレビがインターネットに接続可能となり、海外の動画配信サービスのボタンが付いたリモコンも出てきた。スマートフォン動画の利用も急増しており、これらのサービスは安価に利用できる。こうした変化を受けて、『インターネットがあれば放送はいらない』との声もあるが、私はそうは思わない。放送は、インターネットのようにネットワークが混雑する心配が無く、災害発生直後等の情報入手の手段として重要な役割を果たしている。地域情報や災害情報の“窓”として、新しい技術を取り込みながら活用され続けるだろう。今後は、全ての機器がインターネットに繋がるIoTデバイスとして、在宅医療等での活用も進めたい。但し、40代以下ではインターネットの利用が主流になっている。質の高い放送コンテンツをもっとインターネットに流通させるべきだ。NHKにも民放にも、こうした変化を踏まえて、経営改革を進めて頂くことを期待したい」

――総務省としては、どのような対策を進めているのか?
「昨年11月から、有識者による“放送を巡る諸課題に関する検討会”で議論を進めている。ここでは“放送とインターネットの連携による新サービスの展開”・“災害や医療サービス等、地域に必要な情報流通の確保”、更には“インターネット時代に対応した業務・受信料・経営の透明性の向上といったNHKの在り方”の3点を中心に、提言を戴いた。今後、具体的な方策を議論する」

――検討会では、NHKの受信料についても議論している。支払いの義務化はあるのか?
「受信料には、国民・視聴者の皆様の“負担金”という性格があり、NHKの業務・経営の在り方と切っても切れないものだ。受信料・業務・ガバナンスを三位一体で改革することが重要だ。総務省もスピード感を持って取り組んでいく。検討会においても、『公平負担の徹底を図りつつ、業務の合理化・効率化を進め、その利益を視聴者へ適切に還元すること』『受信料が、視聴者にとって納得感のあるものとしていくことが求められる』という旨の提言を戴いている」

――公共放送の在り方や、NHKのガバナンスをどう考えるか?
「NHKは受信料で運営される特殊法人として、コスト意識を持ち、効率的・効果的な運営を行うことが求められている。グループ全体でガバナンスが実効的に確保されることが必要であり、その為の経営体制を構築することが重要になる。検討会においても、『意思決定の透明性の向上の為に、情報公開の推進を図るべき』『第三者によるチェックの仕組みを構築すべき』といった指摘があった。受信料に支えられた公共放送の位置付けを踏まえながら、NHKのガバナンスの在り方を検討していきたい」


キャプチャ  2016年11月19日号掲載

スポンサーサイト

テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR