【経済の現場2016・農業再生】(02) 高コスト、コメ農家圧迫

20161206 05
東北地方のコメどころで農業法人を経営する男性(57)がぼやいた。「中小企業診断士がうちの決算書を見て、『何でコメやるの?』って首を捻っている」。国内平均(北海道除く)の30倍を超える60ha近い農地で、コメや大豆等を生産しているが、経営は厳しい。昨年の決算書を見ると、主力のコメの売上高は約2800万円。これに対し、『農協(JA)』から買っている肥料・農薬・農機具の減価償却費や、従業員らの賃金等は計4500万円以上かかる。男性は、「補助金が無いと成り立たない。集落の存続の為だ」と語る。国から貰う約2100万円の補助金が頼りだ。「大規模な農業法人は経営基盤が強い」というイメージがあるが、実際は全く余裕が無い収益構造に陥っている。「毎年、JAから資材の申込書が来るが、いつも同じメーカーで価格が高い」。宮城県の兼業農家の男性(58)は不満を抱く。勤務する水産加工会社が休みになる日に、1人でコメを作る。農地は約1ha。売り上げから諸経費を差し引くと、補助金を加えても手元に残るのは年間約40万円しかない。男性は、「会社員の給料だけでもやっていけるから。今の米価では、副業というより趣味のようなもの」と話す。

農産物販売額が年間50万円以上の“販売農家”の内、5割強は、この男性のように、農業以外の収入が主の“第2種兼業農家”だ。「農業で稼がないと生活ができない」という切迫感は無く、コストや販路開拓といった経営意識は求めようがない。農林水産省が行ったコメ生産における日韓比較によると、10a当たりの生産費は韓国が7万2567円なのに対し、日本は13万4041円もする。味や品質の差等があるとしても、割高感は否めない。資材も販路も自ら開拓し、コスト意識を持って、文字通り“農業経営”を実践する大規模農家ではどうか。宮城県大郷町の農業法人『大郷グリーンファーマーズ』は、地域でも有数の大規模法人で、経営面積は80haに迫る。農業用資材の仕入れでも農産物の出荷でも、JAは利用していない。外食チェーン等販売先を開拓し、顧客を掴んでいるが、郷右近秀俊社長(54)は「主食用米では儲けられない。補助金と野菜の利益で経営を回している」と話す。日本人の主食であるコメは、いつの間にか“儲からない農産物”の代表的存在になった。高値で売れるブランド米で収益を上げる農家もいるが、一部に止まる。背景にあるのは、米価が長期的にみて下落傾向にあることと、消費者のコメ離れだ。農水省によると、1人が1年間に食べるコメの量は約55㎏で、ピーク時(1962年・約118㎏)の半分以下に減った。政府・与党が“改革の本丸”と位置付けた全農改革をすれば、コメ農家が抱える課題の全てが魔法のように解決する訳ではない。政府が昨日決定した『農業競争力強化プログラム』には、全農改革をきっかけに、取引先の資材メーカー等農業関連業界の再編を進めることや、生産性向上に欠かせない農地の大区画化をスムーズに進める対策が盛り込まれた。農業の構造改革は待ったなしだ。


⦿読売新聞 2016年11月30日付掲載⦿
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