【歪んだ外国人実習】(02) 8ヵ月殻むきばかり…“計画書”守らず、職歴も嘘

20161206 06
牡蠣養殖の筏が連なる広島湾沿岸の水産加工場。今月、広島県内のその加工場を記者が訪れると、横一列に座った男性5人が、“牡蠣打ち”と呼ばれる鉄製工具で1つひとつ殻をこじ開け、身を剥がしていた。5人は何れも、途上国への技術移転を目的とする外国人技能実習制度で来日したベトナム人実習生だ。繁忙期には、1人で1日5000個超の殻を剥く。1個当たりの時間は約5秒。最低賃金で働く5人の給与は、残業代を入れても手取りで月10万~13万円だが、加工会社の役員は「真面目で、仕事を覚えるスピードも速い」と話す。ただ、5人がやっている仕事は、受け入れ窓口となった監理団体が入国管理局に提出した“実習計画”とは食い違っている。計画書では、年間の実習時間数に占める殻剥きの時間は3分の1強に止まる。他に、養殖の船上作業や安全装置の点検等、技術力を要する作業が列挙されているが、実際には出荷シーズンの8ヵ月間の殆どを殻剥きに費やす。同制度では、実習計画の不履行は受け入れ停止処分に繋がる可能性もある。だが、男性役員はこう言い切る。「計画通りでは会社が回らない。実習制度が労働力不足を補う為の名目である以上、実習計画も名目に過ぎない」。この加工場では、別の問題もあった。実習生が来日するには母国での同種業務の経験が条件となるが、役員はこの“前職要件”のことを「よく知らない」と話し、「来日前は兵役に就いていた」と語る実習生もいた。

前職要件を満たす為の虚偽申告は、実習の現場で後を絶たない。広島県内で実習生らを支援する民間団体によると、他の牡蠣加工場でも、内陸の内モンゴル自治区から来た中国人実習生の住所が海沿いの“大連市”とされ、職歴も“漁業関連”に偽装されていたことがあったという。2013年10月に来日し、香川県の紙加工場で働いた中国人女性(37)の履歴書には、“2008年6月~今 大連金州嵩華紙製品有限公司”という身に覚えのない職歴が記されていた。「2008年6月から約5年間、印刷の仕事に就いた」とする記載だが、女性によると「この時期はデパートで働いていた」という。大連市の送り出し機関から「嘘の履歴書を渡された」と、女性は証言する。実習生は、帰国後に実習で得た技能を生かす仕事に就く予定があることも求められ、これを“後職要件”と呼ぶ。厚生労働省が、昨年帰国した実習生約1万7000人を対象に行った調査では、帰国後の仕事について、約75%が「実習と同じ」「実習と同種」と回答した。だが、回収率は僅か約12%。「実態を反映していない」との声は、同省から調査を委託された『国際研修協力機構』(東京都港区)の内部からも上がる。前出の広島の加工場で働くべトナム人男性(24)は、「牡蠣の殻剥きはとても大変。べトナムに帰ってまで養殖の仕事をするつもりはない」と明かす。一昨日成立した『技能実習適正実施・実習生保護法』により、監理団体や実習先の指導・監督は、新設の『外国人技能実習機構』に委ねられる。今後は、専門的知識を持つ同機構の職員が実習計画の内容をチェックし、立ち入り検査も行う。ただ、東京都内の監理団体幹部は「前職要件等を厳格に適用すると、養殖や建設業では受け入れが難しくなる。低賃金の労働者が必要な業者を見捨てることになりかねない」と、新制度への懸念を隠さない。相手国の送り出し機関を処罰する権限が日本側に無いことも、虚偽申告等の横行に繋がっていた。政府は同法成立に伴い、各国の政府との間で、送り出し機関への指導・監督の強化や、調査協力等の協定を結ぶ方針だ。法務省幹部は、「“実習”を適正化するには、相手国の協力も重要になる」と指摘している。


⦿読売新聞 2016年11月20日付掲載⦿
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