【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(25) 暴力団がペトロダラーを掴めた日本の商社の石油取引事情

「バレル5ドルで毎月2500万の儲けや」。男はそう言いながら、シティバンクのステートメントを筆者に見せた。暴力団が現物の石油取引に乗り出したばかりの頃の話である。彼は在京組織に在籍していたが、逸早くドバイへ進出し、中国向けの石油を扱っていた。“バレル5ドル”とは、「1バレルにつき5ドルがコミッションとして彼に支払われる」という意味である。つまり、毎月500万バレルの固定契約を纏めたということだ。原油の取引単位である“バレル”とは、19世紀のアメリカで輸送用に使っていた“樽”を指し、1バレルは約159リットルである。原油の取引価格は、指標となる数字こそあるが、アロケーションホルダー(石油の販売権保有者)の言い値で自由に決めることができる。中東のアロケーションホルダーが「バレル30ドルでいいよ」と言えば、30ドルで買える。しかし、石油会社に足元を見られる日本の商社は、スポット価格(都度取引)に連動するフォーミュラ価格方式が採用されており、高値で買わされているのが現実だ。日本は石油の99%を輸入に頼っている。だから、商社は石油の安定確保が至上命題となり、結果として高値掴みとなるのは仕方ないことだろう。「アメリカンドリームやで」。いや、違う。アメリカで成功した者だけがアメリカンドリームだ。「それより税金の心配でもしてろ」。筆者は心の中でツッコんだが、目の前にいる男がペトロダラーを儲けたのは事実である。彼はその後、原油の他に天然ガスや重油でも相当儲けて堅気となり、現在はシンガポールで悠々自適の生活を送っている。他にも、石油で儲けた連中を何人か見てきた筆者は、石油取引について徹底的に研究した。

そして、イエメンの南にまでやって来たのだ。途中の集落で給油をした筆者たちは、目的地のアルガイダへ向けて出発した。AK47自動小銃は買っていない。ランドクルーザーで3時間ほど、何も無い道路を走ると、土埃を被ったような色の街が見えてきた。大きな街ではないが、ホテルやレストランもある。想像していたような危険は感じられない。街の中心部は狭く、少し外れると荒廃した土地ばかりだった。取り敢えずホテルを探し、シャワーを浴びてからアロケーションホルダーに会いに行くことにした。3階建ての小さなホテルは、1泊が約1200円。テレビは壊れていた。こんなホテルに泊まるにも、旅行許可証が必要だった。アロケーションホルダーの部族長は、街の中心部から車で20分くらいの所に住んでいた。石壁とレンガで作られた、とても頑丈そうな家だった。通訳のハサンを先頭に建物に入ると、長い髭に赤いクーフィーヤを被った小柄な男が、笑顔で迎えてくれた。歳は60前後か。格好や顔つきは、パレスチナ初代大統領のヤーセル・アラファトに似ている。入り口に、文字の書かれた大きい布が貼られていた。「ジハードの為に体を張れ。体が張れないならカネで応援せよ。それもできないなら祈っていろ」。コーランの一節らしいが、まるでヤクザの世界と同じだ。部族長は日本がどこにあるのかも知らなかったが、遠いところから会いに来た筆者を心から労ってくれた。矢鱈に甘いシャイハリブ(※練乳入りのお茶)を飲みながら、徐に筆者は原油取引について話し始めた。「いくらでも売ってやる」。部族長は嬉しそうに答えた。フーシ派と戦う資金を捻出する為に、アロケーションを与えられている。そう、彼も売ってナンボなのだ。筆者たちの利害は完全に一致した。これで日本へ帰ることができる。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2016年12月6日号掲載
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