【ヘンな食べ物】(16) 世界珍食1位? 猛毒フグの卵巣

先日、某誌の企画で、発酵学の大家として知られる小泉武夫先生と“世界の珍食・奇食ランキング”を決めるという対談を行った。其々が過去に食べたゲテモノや臭い食品等を挙げていったのだが、最終的に1位を獲得したのは、小泉先生が推した石川県産『猛毒フグの卵巣の糠漬け』。フグの中でも卵巣は最も危険な部位で、1匹分で30人を殺せるほどの毒があるそうだ。そんなものをどうやって食べるのかというと、先ず、卵巣を3~5ヵ月ほど塩漬けにした後、糠味噌の中に漬けておく。すると、糠味噌の乳酸菌による分解で毒が少しずつ減り、3年後にはすっかり無毒且つ美味しい卵巣漬けになっているという。こんな異常に高度な技術が江戸時代から培われていたというから、日本人の食い物に関する貪欲さは恐ろしい。だって、技術が確立するまでに何人が犠牲になったかわからないじゃないか。ほんの少しでも毒が残っていればアウトなのだ。他にも食べ物が沢山ある訳だし、どうしてそこまでしてフグの卵巣に執念を燃やしたものかわからない。先生がお土産にビニールパックされた商品『ふぐの子ぬか漬』(『㈱あら与』)を1つくれたので、家に持ち帰って食べてみた。色は合わせ味噌程度の色で、大きさや形状は明太子かカラスミ。口に含むとかなり塩辛いが、同時に乳酸発酵ならではの弾けるような旨味が押し寄せる。なるほど、これは酒のあてにもご飯のお供にもよさそうだ。実際、熱々のご飯にこれを載せ、お湯をかけると、塩気と旨味が程良くご飯に染み渡り、最高に美味い。感心しつつも、私は何か奇妙な既視感、いや“既味感”に襲われていた。「これ、どこかで食べたことがある…」。数十秒考えてわかった。「そうだ、アシュバルだ!」。アシュバルとは、中東のイランで作られている卵巣の漬け物だ(※以下次号)。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月8日号掲載
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